ヤマトホールディングスは、オーストリアのサイクロテック社と2021年3月から「強風下でも狭い土地に正確に着陸できる中型eVTOL(電動垂直離着陸)航空機の成立性に関する共同研究」に取り組んでおり、2022年4月12日、その理論研究の成果を白書にまとめて公開した。

 サイクロテック社は、フォイト・シュナイダープロペラをもとにした「サイクロローター(航空機用推進器)」の開発事業者である。サイクロローターは、その特徴となる360°推力変更システムによって垂直離着陸を行い、高度な機動性を備える。特に都市環境において真価を発揮するという。垂直離陸から水平飛行への遷移や風への対応、精密着陸を容易にし、狭い土地への着陸や厳しい気性環境下でも安全な運用が可能となる。

将来導入が予想される物流eVTOL機のイメージ。黄色のユニットが「PUPA 701」。

 共同研究は、ヤマトホールディングスが開発した貨物ユニット「PUPA 701」と、サイクロテック社が実用化した推進システム「サイクロローター」の2つを中核技術として進めた。

 PUPA 701は、ヤマトホールディングスが現在活用を検討する物流eVTOL機に限らず、他の先端的な無人航空機にも搭載可能な貨物ユニット「PUPAシリーズ」の一つ。機体から貨物ユニットを簡単に着脱できる設計のため、陸上においても安全で効率的なオペレーションが可能である。

 eVTOLの推進力を担うサイクロローターは、コンパクトな設計でありながら瞬時に偏向推力を生む特徴を持ち、垂直離陸から水平飛行への自然な推移や高い機動性をもたらす。また、電動サイクロローターを応用することで、運用に合わせた柔軟な機体設計が可能になる。

物流eVTOL機の飛行イメージ。

 今回、物流eVTOL機におけるサイクロローター利用の有効性と実用性を理論上証明したことで、今後ヤマトホールディングスは、空の領域を活用した高付加価値のビジネスモデル構築を計画、促進していくとしている。サイクロテック社はサイクロローターの要素技術を高め、広く機体メーカーや運用者に提供していく。

▼白書「未来の空の物流のためのサイクロローター(英文)」
White Paper 2022 - CycloRotors for Advanced Aerial Logistics