2022年3月21日、DJIは、プロドローンオペレーター向けのオールインワン ソリューションを発表した。業務用ドローン「Matrice 30シリーズ」(M30、M30T)と、フリート管理遠隔システム「DJI FlightHub 2」(日本での発売時期は未定)、充電ステーションも兼ねた自律型ドローンドック「DJI Dock」(日本での発売時期は未定)から成る同統合型ソリューションにより、目視外でドローンオペレーションが実行できる環境を提供する。
 またMatrice 300 RTKドローン用となる、夜間業務を実現するスターライトセンサー搭載「Zenmuse H20N」も発表した。

 Matrice 30シリーズ機体の参考価格は約90万円から(バッテリーは含まず)、Zenmuse H20Nは約150万円となっている。販売価格の詳細、予約注文はDJI Enterprise正規販売代理店まで。製品の出荷は2022年4月末より順次開始予定。

「Matrice 30シリーズ」(M30、M30T)

 DJI EnterpriseフラッグシップドローンとなるDJI Matrice 30(以下、M30)シリーズは、1つのカメラペイロードに高性能センサーを複数搭載し、制御には独自設計の送信機とアップグレードしたアプリ「DJI Pilot 2」を使用している。パワー、耐久性、性能も大幅に向上。機体はセルフロック システムにより、ボタンを押すだけで折りたたむことができ、持ち運びやセットアップも容易となっている。

 パイロットが操作する飛行オペレーション以外に、ドローンフリート管理用クラウドベースソフトウェアDJI FlightHub 2と、ドローンドックDJI Dockを連携することで、遠隔かつ自動で飛行オペレーションを実行できる。

 同シリーズはM30とM30Tの2種類あり、M30モデルは、5〜16倍光学ズームと200倍デジタルズームに対応した48MP 1/2インチCMOSセンサーのズームカメラ、8K写真や4K/30fps動画撮影に対応した12MP広角カメラ、最大1,200m先の対象物でも高精度に座標を提示できるレーザー距離計を搭載。M30Tモデルは、M30モデルのカメラとレーザー距離計に加え、640×512ピクセルの放射分析サーマルカメラを搭載している。

 保護等級はIP55。-20℃〜50℃の温度範囲で稼働が可能。低照度環境用に最適化されたFPVカメラや、内蔵した冗長システムとバックアップシステム、3つのプロペラしかない状態での緊急着陸機能、状態管理システム(HMS)、6方向障害物回避センサーに対応している。
 4つのアンテナを使用したOcuSync 3 Enterprise伝送システムにより、安定した伝送を行い、複雑な地形や作業環境ではLTE接続をバックアップとして利用可能(国・地域により異なる)。

 最大離陸重量は4kg。自己発熱機能を持つ「TB30インテリジェント フライトバッテリー」は、最大41分の飛行時間を実現。「BS30インテリジェント バッテリーステーション」は、約30分で20%から90%まで充電が可能だ。

 M30シリーズでは、DJI Matrice 300のV3ファームウェア同様の高いデータセキュリティプロトコルを採用。ファームウェアのオフライン更新やローカルデータモード、SDカードデータのAES暗号化にも対応する。

業務用送信機「DJI RC Plus」

 DJI Enterpriseのフラッグシップ送信機となる「DJI RC Plus」は、高解像度の7インチワイド画面を搭載。保護等級は、雨の中でも使用可能なIP54。

 画面の両サイドにある操作スティックの下に、6つのボタンを配置。スティックを操作しながら広角/ズーム/赤外線/FPVビューの切り替えなどをボタン操作で行える。

 駆動時間は最大6時間。内部バッテリーとスワップ交換が可能な外部バッテリーに対応している。microSDカードスロットのほか、USB/HDMI/USB Type Cポートを搭載。4G接続に対応しているため(一部の国・地域)、伝送の冗長性を確保できる。

フリート管理ソフトウェア「DJI FlightHub 2」(日本での発売時期は未定)

 DJI Enterpriseのフリート管理ソフトウェアDJI FlightHub 2は、地上チーム、ドローン、ペイロード、パイロット、全収集データの同期・連携を行う。完全にクラウドベースで機能するため、パイロットの送信機上だけでなく、パソコン、タブレット、モバイル端末などのウェブブラウザを介して飛行ミッションの管理やモニタリングが行える。

 マッピング機能を備えており、「ワンタッチ パノラマ同期」では、ワンタッチで360°のパノラマ画像を作成し、クラウドにアップロードする。パノラマ画像には座標情報が含まれ、該当ミッションの2.5Dベースマップに統合される。「クラウドマッピング」機能は、ユーザーが対象エリアをハイライト表示すると、M30シリーズがそのエリアを自動的に2Dマッピング化し、緊急対応時などにおいて迅速な状況把握が可能となる。マッピングで取得した画像を使い地図を生成し、ユーザーの持つ地図サービスの地図に、生成した地図をオーバーレイすることができる。一度生成された地図はミッションを計画するベースとして使用が可能だ。

 ライブアノテーション機能は、点、線、多角形を使って地図上で対象をハイライト表示できる。M30シリーズのレーザー距離計により、捜索救助ミッションで行方不明者の座標を特定、座標はDJI FlightHub 2のミッション画面上で自動同期されるため、司令センターや地上チームはリアルタイムで座標情報を確認して救助ルートを作成できる。生成された地図やモデリング、調査データは、AWS(Amazon Web Services)クラウドにアップロードすることで、遠隔よりアクセス・管理が可能。

自律型ドローンドック「DJI Dock」(日本での発売時期は未定)

 DJI Dockは、DJI M30シリーズ(Dock版)の自動離着陸や充電ステーションとして、ドローンのプログラム飛行ミッションを自動で実行する。遠隔からモニタリング・管理が可能。DJI Dockをセットアップ後、充電されたM30シリーズ(Dock版)はドックから離陸し、ドックを中心に半径7kmの範囲でFlightHub 2によりプログラムされたミッションを自動で遂行する。

DJI Matrice 300 RTK用「Zenmuse H20N」

 夜間業務を支援するDJI Matrice 300 RTK用のZenmuse H20Nは、スターライトセンサーを搭載したナイトビジョンカメラ、ハイブリッドズーム対応サーマルカメラ、レーザー距離計を併せ持つハイブリッドセンサーソリューションだ。ナイトビジョンカメラは、極度の低照度環境下でも対象を鮮明に捉え、20倍ハイブリット光学ズームに対応。捜索救助オペレーションや緊急事態での業務を支援する。解像度640×512の2つのサーマルカメラは、それぞれ2倍と8倍の光学ズームに対応している。レーザー距離計の測定範囲は1,200m。