2019年12月12日、マゼックスは、自社が開発する延線・架線・索道用ドローン「延助」を、電設業・建設業の顧客の声をもとに「延助Ⅲ」として、2020年にニューリリースすることを発表した。最大15kgの負荷をかけた状態で突風が吹いても、安定飛行が可能な引張力や、数百回の飛行に耐える剛性を有する。また、国土交通省への申請や許可書の発行手続き、機体登録や報告作業まで全てを代行する。

 初代「延助」から約2年。当初は農薬散布ドローンのフレームに切り離し装置を搭載し、延線用として誕生した延線・索道・架線ドローンであった。しかし、実際に使用する過程では、農薬散布ドローンとは違う環境での安定力や引張力が必要である。その経験や知識を活かし、新たに開発したのが電設用ドローン「延助Ⅲ」である。

 延助Ⅲは、農業用ドローンの経験も活かしつつ電設専用フレームとして設計されている。農業用ドローンでは散布幅内を均等に散布することを求められるが、電設用は延線作業を行っている間も安定して飛行し続けることを求められる。そのような飛行方法や、モーターやESC、フレーム寸法を計算し開発された。

 ドローンといえば自動飛行が定着しているが、延線作業では目的地点で繊細な調整が必要なため、自動飛行やカメラでの操作では難しく、自動飛行を使用するメリットがあまりない。そこで2オペレーション仕様を開発し、2台の送信機で1台の機体を操ることにより、目視内ですべての作業を行うことが可能になった。これにより目的地点での微調整も簡単に行なえる。

 延線ドローンは飛行前の申請や許可が特に難しいと言われているが、マゼックスの機体購入者には、2019年12月より全ての申請や登録、報告まで代行する。これにより、産業用ドローンの導入時の負担を大幅に軽減。さらに1年目は対人対物保険も付帯。申請の際の保険加入作業なども請け負う。

 価格は機体・送信機2台を含めて、1,498,000円 。

延助Ⅲ(製品ページ)
https://mazex.jp/product_cat/nobisuke

産業用ドローン延助Ⅲとは

 延助Ⅲは、延線・架線・索道などの作業を実施するための産業用ドローン。2つの送信機で1台の機体を操縦する2オペレーション仕様を標準装備している。垂直方向に最大17kgの推進力のあるモーターと強固なフレームで、気象条件に左右されること無く、初心者でも安定して迅速に作業を実施できる。
 機体は国内で生産され、多種多様な現場で誰でも簡単に正確な作業を可能にするために、高性能GPS、気圧センサー、位置確認システム、安全システムを搭載し、「通常作業・緊急離脱用」の2種類の切離し装置を装備している。

機体のスペック
重量10.7kg
サイズ980×980×572mm
機体材質カーボン・高剛性アルミ
対モーター軸間距離1,230mm
ESCインテリージェントESC 高放熱性
前後確認灯高輝度LED 前:赤 後:緑
プロペラ折りたたみ式 33inch

強い突風にも流されない安全性

 これまでは、空撮用ドローンを利用して延線作業が行われていたが、空撮用ドローンはもともと物資の取り付けが想定されていないため、突風が吹くと機体は風に流され安全性を確保することができない。また軽量の紐などを利用しなければならないため、空中で木に絡まることが多々あった。

 延助Ⅲは、最大で150N(15kg)の力で牽引することで、ロープでも張力をかけて牽引することが可能になった。それにより延線作業も簡素化できる。強い突風が吹いても機体は流されることなく、33インチの大きなプロペラで目的点まで安全に作業を遂行させる。飛行速度は約15~20km/時で、500mを約90秒で目的地点まで牽引する。

パワフルなモーターとウルトラカーボンプロペラで効率的な推進システム

 延助Ⅲの推進システムは、農業用で長く使用された機構をベースにしてアップグレードされた。瞬間最大出力は、1つのモーターで17kgに達する。また内部は耐候性シーラントが塗布され、回路基板を液体やほこりによる腐食から守る。くわえて、冷却フィンにより1時間の連続運転でも表面温度は10℃の上昇で抑えられる。

 33inchと大きいプロペラは、ウルトラカーボンを使用した高い剛性と強度のある複合材料から形成されている。折りたたみが可能でありながら、空力効率で長い飛行時間を実現する。

2オペレーション仕様

 延助Ⅲは、機体1台に対して2台の送信機で操縦を行う。オペレーターは出発点、サブオペレーターは目的地点に配置し、中間地点に到達するとスイッチ操作で操縦権を瞬時にサブオペレーターに移行する。操縦権が切り替わると、目的地点に向けて飛行を再開し作業を完了させる。

 2オペ仕様の特徴は、これまでの空撮用ドローンなどのカメラや自動操縦では困難だった「木と木の間2mの間隔にロープを通す」などの微調整が容易に行えることである。また全てを目視内で操縦することにより、安全性を確保して迅速に作業を遂行することができる。送信機も高性能型を使用しているため、最大1km離れた場所でも作業することができる。

2オペ仕様のための安全対策

1. 操縦権切替はスイッチをダブルタッチで受け渡しすることで不意の切替をなくす。
2. 飛行に危険性があったとき、5回連続タッチすることで強制的に操縦権を取得する。
3. 操縦権が移行した場合、機体のLEDがゆっくり点滅し移行したことを知らせる。
4. 移行した先でバッテリー電圧が低下した場合は、LEDがはやい点滅を繰り返す。
5. 飛行中に送信機と切断した場合、自動で反対側の送信機に切り替わる。
6. 2つの送信機とも切断した場合、機体は離陸地点に自動着陸する。
7. 通信が復帰した場合でも、突然操縦権が移行することはない。

切離し装置について

 長年改良を行ってきた電動切離し装置を装着しており、スイッチ1つでロープなどを任意の場所で切り離すことができる。万が一切離し装置が作動しなかった場合は緊急リリース装置で装置ごと切離し、機体を帰還させる仕様を採用している。

 切離し装置を利用することで機体に人が近づく必要がなく、安全正確かつスピーディーな作業が実現する。切離し装置は15kgの荷重をかけた状態でも作動するように設計されている。ABS製樹脂で製造しており耐久性に優れ、故障した場合でも容易に交換を行える設計にしているため、予備の切離し装置があれば作業を中断するリスクを回避できる。

導入実績:従来2日間必要だった延線作業を90分で完了

 当日は、人員配置や移動に合計60分。途中3か所で2~4mの隙間に延線を通す必要があったが、作業時間は4本の延線を30分で終了。従来までは2日間必要だった作業を、全作業合計90分で完了した。

当日の条件

1. 延線距離は450m。安全対策のためB地点へ一度着陸。
2. オペレーター同士が確認できない現場。2~4mの隙間を①・②・③の3か所通す。
3. 合計4本のロープを延線作業。ロープは1.3kg/100mを使用する。
4. 天候:晴、風速:5m/s。海辺のため5m/s以上の突風が時々発生する。

機体の安全性能について

・バッテリー警告機能
飛行中バッテリー残量が少なくなれば、送信機が音と振動を発し操縦者に知らせる。

・通信切断操縦権移動機能
オペレーターとの通信が途絶えた場合、 サブオペレーターの操縦に自動で切り替わる。

・通信切断自動着陸
オペレーターとサブオペレーターの両方の通信が切断した場合は、機体は自動で離陸地点に帰還し着陸を行う。

・操縦権強制移動機能
ある一定の操作をすると、操縦権を強制的に切り替える。

・緊急停止
飛行中危険を感じ対応出来ない場合は、送信機の操作により強制的にその場でモーターを停止し、危険を回避する。

・GPS異常回避モード
GPSの異常で機体の動きがおかしい場合、GPSを切断し高度維持機能のみを使用したモードに変更出来る。

新たなサービス(下記の新サービスは2019年12月より開始予定)

・対人、対物保険1年間を付帯
機体の新規購入者に対人・対物保険1年間を付帯する。サービス充実により導入時の負担を軽減する。

・代行申請の無料サービスを開始
国土交通省への申請や許可書の発行手続き、機体登録や報告作業まで全て代行する。