KDDIは、2026年9月30日から10月2日に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催された「危機管理産業展(RISCON TOKYO)2026」に出展し、ドローンポートを活用した遠隔運航システムを紹介した。「いつもの備えが、もしもを支える。」を展示テーマに、平時のインフラ点検や通学路の見守りから、災害時の被害状況把握まで、同じ設備を活用する「フェーズフリー」の運用を提案した。
同社はすでに石川県を中心に全国20カ所にドローンポートを設置しており、大阪府での通学路の見守りや、石川県での道路復旧工事の進捗確認などに活用している。将来的には全国への配備を目指し、ローソンや郵便局など、地域の生活拠点を活用した整備を進める方針だ。
ドローンポートを活用し、東京から遠隔運航
KDDIスマートドローンは、KDDIのモバイル通信網とドローンポートを組み合わせ、現地に操縦者を配置せずにドローンを運航するサービスを展開している。ドローンポートは機体の格納、自動離着陸、充電などの機能を備え、遠隔地から飛行指示や運航監視を行うことができる。
今回の展示では、米Skydio製の自律飛行型ドローン「Skydio X10」と、同機に対応するドローンポート「Skydio Dock for X10」の実機を展示した。
Skydio X10は、機体に搭載した6基のナビゲーションカメラとAIによって周囲の障害物を認識し、回避しながら飛行できる機体だ。ドローンポートと組み合わせることで、あらかじめ設定した飛行ルートに沿った定期巡視や、必要に応じた遠隔出動に対応する。
担当者によると、現在はインフラ関係の企業からの引き合いが多く、建設現場の工事進捗確認や設備点検、鉄道施設の巡視などで活用が検討されているという。また、災害対応に加え、クマなどの野生動物による被害への対策や、交通事故発生時にドローンを現場へ急行させ、上空から状況を確認する運用も提案している。
大阪では平日の通学路を定期巡視、異常時は手動操作に切り替え
平時の活用事例として紹介されたのが、大阪府池田市の「ハッピーローソンタウン池田伏尾台店」に設置されたドローンポートによる通学路の見守りだ。平日の児童の下校時間帯に合わせて定期的に飛行し、上空から周辺の状況を確認している。
運航は東京都千代田区にあるKDDIスマートドローンの拠点から遠隔で行っている。担当者によると、飛行時には遠隔操縦者がドローンポートや現地に設けられたカメラを通じ、モニターで機体や周囲の状況を確認し、安全を判断したうえで離陸を指示するという。設定時刻になると無人で自動的に出動する仕組みではなく、飛行開始の最終判断は人が行っている。
現地のドローンポート周辺には柵を設け、第三者が立ち入らない環境を確保している。ローソンの従業員が機体やドローンポートを操作する必要はなく、運航はKDDIスマートドローンが遠隔で担当する仕組みだ。
飛行中はあらかじめ設定されたルートを自動飛行し、異常が確認された場合には遠隔操縦者が手動操作に切り替え、カメラを操作して状況を確認する。現在はAIによる人物の自動検知や異常発生時の自動通報は行っておらず、こうした機能の導入については今後の検討課題だという。また、見守りや監視業務において事件や事故が疑われる状況を確認した場合は、KDDIスマートドローンから直接警察に通報する運用ではない。まず自治体へ情報を共有し、必要に応じて自治体から警察などの関係機関につなぐ体制としている。
担当者は、この運用について警備業法との関係など、法的な整理が必要な部分があると説明する。ドローンで映像を取得できることと、その情報を利用して警備や通報を行うことは別の問題であり、運用主体と自治体などとの役割分担も重要になる。なお、行政と連携して平日に定期運航している事例は、現状では大阪の取り組みが中心という。ほかの自治体では、道路や河川の状況確認など、必要に応じたスポット運航が主な利用形態となっている。
能登の道路復旧工事では毎日遠隔運航、工事進捗や現場の安全を確認
民間企業による定期運航の事例としては、大林組と連携した石川県輪島市の国道249号の道路啓開工事がある。この取り組みは、2024年1月の能登半島地震によって通行止めとなった道路の復旧工事を対象とするもので、同年9月11日から自動充電ポート付きドローンを現場に常設している。
▼KDDIスマートドローン - 大林組とKDDIスマートドローン、石川県輪島市の国道啓開工事で自動充電ポート付きドローンの遠隔運航で作業効率化を実現
https://kddi.smartdrone.co.jp/news/release/6920/
運航は東京の拠点から遠隔で行い、基本的に平日は毎日飛行させている。撮影した画像をクラウドに送信し、3次元モデルやパノラマ写真を生成することで、工事の進捗状況を記録している。現場は約3kmに及ぶ道路工事であり、ドローンによる定期的な計測によって、広範囲の地形変化や施工状況を確認できる。2024年9月21日に発生した能登豪雨の際にも、常設ドローンを使って現場の状況を確認し、被害把握に役立てた。
担当者によると、現在は工事の進捗確認だけでなく、作業状況や現場の安全確認にもドローンを活用しているという。なお、この現場ではSkydio製ではなく、DJI製の自動充電ポート付きドローンを使用している。KDDIスマートドローンは、現場の目的や環境に応じて適したメーカーの機体とドローンポートを使い分けながら、遠隔運航サービスを提供している。
導入の課題は費用と人材、手動操縦との使い分けも必要
ドローンポートの導入に向けた課題について、担当者は「最初のハードルとなるのは導入するための予算と、それを動かす運航者・管理者が社内にいないことです」と説明した。
ドローンの導入を検討する企業では、まずプロポ(送信機)で操縦する一般的なドローンを導入し、社内の操縦者を育成するケースが多いという。こうした取り組みを通じてドローンの有用性を確認した後、さらなる業務の省人化を目的として、ドローンポートの導入を検討する流れがある。特に、点検対象となる設備や構造物が多数存在する場合、従来のドローン運用では、操縦者が各現場へ移動する必要がある。ドローンポートを常設すれば、現地への移動や飛行準備にかかる負担を減らし、複数の拠点を遠隔から運航できるようになる。
KDDIスマートドローンでは、顧客企業が運航を内製化する方法、両社が協業して運用する方法、同社が運航を一括して受託する方法など、導入企業の体制に応じた運用を提案している。一方で、すべての業務がドローンポートによる遠隔運航へ移行するわけではない。担当者は、飛行に関する法規制に加え、通信ネットワークを介した遠隔操作やデータ取得に伴うセキュリティ上の懸念も挙げた。特に、警察や行政機関などでは、取得した映像やデータを外部ネットワークに送信することが認められないケースもあるという。このような業務では、現地でプロポを使用する運用が適している場合もある。
担当者は、ドローンポートと従来の手動操縦にはそれぞれ利点があり、運用目的やセキュリティ要件に応じた使い分けが必要との認識を示した。
ローソンや郵便局への設置を進め、全国展開目指す
KDDIは、全国にドローンポートを配備することで、平時・有事を問わず、各地の現場に10分以内でドローンが駆け付けられる社会基盤の構築を目指している。拠点の設置先として、自治体庁舎や消防署などの公共施設に加え、ローソンの店舗や郵便局など、地域に広く存在する施設の活用を進めている。
日本郵便とは2026年6月に基本合意書を締結し、同年9月28日から10月4日まで、石川県珠洲市の珠洲郵便局の屋上にドローンポートを設置する実証に取り組んだ。既存のドローンポートとの連携による複数機の遠隔運航や、平時の通学路の安全確認、災害時の被害状況把握などを検証するもので、2027年度以降の本格的な協業を目指している。
ドローンポートを全国へ普及させるうえでは、設置場所の確保だけでなく、日常的な利用機会をどのように確保するかも重要になる。通学路の見守りやインフラ点検など、平時の業務で活用しながら、災害や事故の発生時には同じ設備を緊急対応に利用する。今回の展示では、こうしたフェーズフリーの運用によってドローンポートの社会基盤化を目指すKDDIの取り組みが示された。
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