今年で11回目を数える、日本のドローン関連企業や団体が一堂に会する展示会「Japan Drone 2026」。文字通り日本のドローン産業の今を網羅的に見ることができる展示会だ。初回開催から10年を経て、ドローン産業の立ち位置の変化とともに、本展示会の出展者やその取り組みにも変化が見られる。特に今年は会場の一角に「就職・転職フェア」のコーナーが設けられるなど、新しい取り組みも行われた。
出展企業の変化から見えるドローン産業の成熟と市場の広がり
Japan Droneも毎年回を重ねるごとに規模を拡大しているが、そこに並ぶ出展者の顔ぶれもドローンが日本の社会に実装されていく中で、少しずつ変化している。国内の主なドローンメーカーがそれぞれ独自に構えるブースが少なくなるとともに、数年前まではJapan Droneに出展していたドコモビジネスやKDDIスマートドローンのような、大手通信事業者系のブースが今年はソフトバンクのみとなった。
こうした変化は特に産業分野においてドローンが実際に現場で利用されるようになっていることの裏返しだといえる。特に測量や点検といった分野では、近年ドローンの社会実装が進み、実際に現場のツールとしてドローンの利用が増えている。そのため、ドローンメーカーやソリューションプロバイダ、サービス事業者は、Japan Droneのようなドローン産業の関係者が集まる展示会よりも、建築・土木の建設関係やインフラ、プラントの保守といった産業分野の展示会に出展する方が、効果が高いととらえているようだ。
今年のJapan Droneは主要なドローンメーカーや大手のソリューションプロバイダの出展が少なかった一方で、近年、経済安全保障の観点で語られる“国産ドローン”を意識した出展が目立つようになっている。国は、2025年12月に経済安全保障推進法に基づく特定重要物資にドローンを指定し、2026年1月には2030年時点で国内において8万台の生産体制を整備するという目標を掲げた。こうした政策を受けて国内のドローンメーカーに加えて、これまでドローン産業とは無縁だった国内の企業が増えている。
Japan Droneでは数年前からドローンを構成する部品や素材のメーカーを集めたコーナーを設けている。今年の「機体構成部品・素材特別企画ゾーン」では、あらたに三ツ星ベルトが出展。同社は自動車や二輪車をはじめとした動力用ベルトやベルトコンベヤの搬送ベルトなど、総合産業用ベルトを手がける企業である。産業用ベルトはおもにゴムと補強材を複合して作られており、こうした「複合する技術をドローンに生かす」(説明員)ということから、同社のブースではドローン向けにブレード(プロペラ)やローターアームを展示していた。
現在、ドローン用のブレードは熱硬化性樹脂を使ったCFRP(炭素繊維強化プラスチック)製のものがほとんどであるが、同社は熱可塑性樹脂を用いたブレードを提案。手で曲げられるブレードは「熱硬化性樹脂の場合、モノにぶつかると破損して飛散するため危険。熱可塑性樹脂は飛散する可能性が低い」(説明員)という。また、展示していたCFRP製ローターアームは、ひと塊の素材で丸、四角など断面を自在に変化させることができるほか、モーターを取り付けるような穴を後から開けるのではなく、成型時にあらかじめ繊維を逃がす形で穴を開けて成形する技術を披露。「強度が向上するだけでなく、製造過程を少なくすることでコストダウンにつながる」(説明員)としている。
このほか、電池パックメーカーのトーカドエナジーは、大型のドローンに搭載することを想定した国産電池パックを提案。また、自動車や航空機の試作開発を請け負っているトピアは、ドライカーボン部品の製造技術を訴求するだけでなく、量産に必要な製造ラインのイメージを提案していた。
就職・転職フェアを新設、人材不足と雇用のミスマッチ解消を目指す
今年のJapan Droneでは新たに「就職・転職フェア」のコーナーが設けられた。近年、ドローンの利活用が広がる中で、ドローン産業に関わる人材の不足が課題となる一方で、国の無人航空機操縦者技能証明を取得したり、ドローンスクールを修了しても、こうした資格や技術を活かせる場がないという課題があるとされる。また、ドローン業界を志す学生にとっては、ドローン産業が未成熟であることもあり、キャリアに関する情報が不足していて、ドローン業界への入職に至らないともいわれている。
こうした人材、企業、学生それぞれの課題と、そのミスマッチを解消する目的で、企業と人材を結びつける場として、今年から「就職・転職フェア」のコーナーが設けられた。また、Japan Drone開催前の5月には、「就職・転職フェア2026 会期直前オンラインセミナー」が開催されている。
同フェアのコーナーには、TEAD/桑原電装、エアフォートサービス、快適空間FC、DIC、ジュンテクノサービス、エアロセンス、ORSOドローンエモーション事業部の7社がブースを並べた。出展者のひとつであるジュンテクノサービスによると、「ブースに訪れるのはおもに二十代と五十代より上の世代が多い」(説明員)といい、来訪者に共通しているのは「ドローンスクールなどを卒業して操縦技能は身に着けたが、実際に仕事につながらないという人が多い」(説明員)という。その一方で、同社はおもに水中ドローンを中心とした機材の販売と点検などのサービスを提供しており「操縦者としてよりもビジネスとして企画や営業ができる人材を求めている」(説明員)として、企業の人材のミスマッチを挙げていた。
また、印刷用インキを祖業とするDICは、2025年に独創的な全方位マルチコプター「HAGAMOSphere(アガモスフィア)」を発表。化学メーカーとしての素材技術を活かし、新規事業として同モデルの販売や点検などのサービス提供を目指している。同社では「新規事業を立ち上げるにあたって、ドローンに関する技術を持った設計者がいない。そこでこのフェアを通じて設計者を募っている。また、アガモスフィアを使ったサービスが事業化した場合には、操縦者が不足することになる。そのため、このドローンを量産するような体制になれば、パイロットを増やしていきたい」(説明員)としている。現時点ではドローンの設計者を求めているが、「来訪者の多くが“せっかく免許を取ったのでドローンを飛ばしたい”という人になっている」(説明員)という。
