国産産業用ドローンを開発するAutonomyHDは、7月15日~17日に東京ビッグサイトで開催された「第12回 国際ドローン展」に出展し、「Surveyor」シリーズの新型機を展示した。有線給電とバッテリー飛行を切り替えられる「Surveyor-ⅠN HYBRID」、最大70kgの物資搬送を想定した「Surveyor-X70」、メッシュネットワークを利用した分散制御・スウォーム飛行に対応する開発中の「Surveyor-Mini」の3機種を紹介した。

災害現場の要求から生まれた「Surveyor-ⅠN HYBRID」

写真:会場に展示された「Surveyor-ⅠN HYBRID」
有線による常時給電飛行と、バッテリーによる飛行が可能な「Surveyor-ⅠN HYBRID」。

 Surveyor-ⅠN HYBRIDは、同一の機体でバッテリー飛行と有線給電飛行を使い分けられるクアッドコプターだ。展開時の機体寸法は全長700×全幅700×全高450mm。標準離陸重量はカメラ・ジンバルを含め7.1kg、最大離陸重量は9.0kgで、防塵・防水性能はIP43相当、耐風性能は10m/sとしている。バッテリー駆動時の飛行時間は約50分だ。

 開発の背景には、災害対応などで「長時間の定点監視と、周辺を移動して行う状況確認を1機で行いたい」というニーズがあったという。同社には従来、有線給電専用の「Surveyor-Ⅲ」があったが、Surveyor-ⅠN HYBRIDでは機体側のバッテリーユニットと有線給電ユニットを交換することで、同じ機体を2通りの運用に利用できるようにした。飛行中にケーブルを切り離す仕組みではなく、有線飛行からバッテリー飛行へ移る場合はいったん着陸し、地上でユニットを交換して再離陸する。担当者は災害対応を想定したユーザーからの要望を受けて、この構成を開発したと説明している。

 有線給電装置は100~240V入力で約2000Wを供給し、給電ケーブルの長さは110m。機体側の有線給電ユニットには約5分間のバックアップバッテリーも備える。有線飛行では地上側から電力を供給し続けることで長時間の定点飛行が可能で、同社によると24時間の連続飛行も実施したという。夜間運用向けに400WのLED照明装置も用意する。

写真:「Surveyor-ⅠN HYBRID」の有線給電装置
「Surveyor-ⅠN HYBRID」の有線給電装置。

 係留飛行として航空法上の特例を利用する場合には注意が必要だ。国土交通省は、十分な強度を持つ30m以下の紐などで係留し、飛行可能範囲への第三者の立ち入りを管理するなどの措置を講じた場合、人口集中地区上空や夜間、目視外飛行などに関する一部の許可・承認を不要としている。Surveyor-ⅠN HYBRIDの給電ケーブル自体は110mだが、同社では係留飛行の条件に合わせ、30m仕様とする要望にも対応できるとしている。

 搭載するジンバルカメラは、640×512pxの赤外線カメラ、最大4800万画素の広角・望遠可視光カメラで構成する。望遠カメラは10倍光学ズームに対応する。

 有線給電では、災害現場の上空から被害状況を継続して監視したり、イベント会場で人流を確認したりする運用を想定する。一方、被災後に人が入りにくい場所を広範囲に確認する場合はバッテリー飛行へ切り替え、一次的な状況把握に利用する。長時間の「定点監視」と、移動を伴う「状況調査」を1機で使い分けられることが、ハイブリッド化の狙いとなる。

「Surveyor-X70」は送電設備の70kg級重量物を想定

写真:「Surveyor-X70」
重量物の搬送を目的に開発された「Surveyor-X70」。従来モデルの「Surveyor-X」は、最大ペイロード60kgであったが、さらに大型化し、最大70kgを確保した。

 重量物搬送用の大型マルチコプター「Surveyor-X70」は、最大70kgのペイロードを想定して開発した機体だ。山間部や被災地への物資輸送、大型センサーを使用したインフラ点検などを用途としている。

 70kgという積載能力には、具体的なユーザーニーズがある。開発担当者によると、電力・送電分野から、送電設備で使用する碍子(がいし)など、分割して運べない70kg級の資材をドローンで搬送したいという要望が寄せられたことが開発の契機の一つになったという。また、大型機でありながら現場まで車両で運べるよう、折り畳んだ状態でトヨタ・ハイエースに収まることを念頭に機体を設計した。

 機体下部にはウインチを搭載する。単純に長いロープで貨物を吊り下げたまま飛行すると、飛行中の荷振れが大きくなり、速度を上げにくい。そこでX70では、離陸後にウインチで吊り下げ長を短くして巡航し、目的地に到着してから再びロープを伸ばして荷物を接地させる運用を想定する。これにより、機体を着陸させる場所がない山間部などでも荷下ろしできるほか、長距離搬送時には吊り荷による飛行への影響を抑えられるという。近距離の搬送では通常の吊り下げ方式、長距離ではウインチを利用するなど、用途によって使い分ける考えだ。

写真:「Surveyor-X70」下部のウインチ部分
「Surveyor-X70」の下部に取り付けられたウインチ。

「Surveyor-Mini」は機体同士が位置・速度を共有して分散制御

写真:「Surveyor-Mini」
国プロで開発中の「Surveyor-Mini」。多運航の技術開発を主としたプロジェクトとなる。

 開発中の「Surveyor-Mini」は、インフラ点検や空撮などの単機運用に加え、複数機を協調させるスウォーム飛行を想定した小型ドローンだ。

 Surveyor-Miniの開発で特に力を入れているのが「分散制御」であることが明らかになった。各機にはメッシュネットワーク用の通信モジュールを搭載し、自機の位置情報に加えて、ほかの機体の位置や速度などを相互に共有する。各機はこれらの情報から機体間の距離や速度差を計算し、あらかじめ与えられたアルゴリズムに基づいて自らの飛行を調整する。

 例えば複数機で列状や四角形などの編隊を組む場合、単純に1機の軌跡をほかの機体が追従するだけではなく、各機が自機と周囲の機体の状態を把握しながら設定された隊形を維持する。地上局と直接通信しにくくなった機体についても、ほかのドローンを中継してデータを伝送できるようにする。

 一方、機体数が増えるほど制御側が扱う情報量も増える。単機飛行では自機のセンサー情報を基に制御すればよいが、分散制御では他機の位置、速度、距離などを同時に演算しなければならない。さらに、メッシュネットワークでは、どの機体を経由して地上局までデータを送るかという通信経路の選択も必要になる。開発担当者は、こうした通信ルートの最適化は現在も課題として残っていると説明した。

 地上側の管理システムも多数機運航を前提に開発している。現在は4機程度を使った開発を進めており、システム上は最大7機分の位置や状態を1台のPCに集約して表示し、それぞれの機体へ指示を送れる構成としているという。多数機を「一括して飛ばす」だけでなく、各機が状態を共有しながら制御判断を行うための基盤技術を構築している段階だ。

 AutonomyHDは2023年にも、インドのNewSpace Research & Technologies(NRT)と15機によるスウォーム飛行を実施している。この実証では機体間通信にメッシュネットワークを利用し、一部の機体が飛行できなくなった場合でも残った機体でネットワークを再構築する考え方などを検証した。今回のSurveyor-Miniは、こうした多数機運航の研究を小型の自社機へ展開していく取り組みとして見ることができる。

ステレオカメラとSLAMでGNSSが届かない環境へ

 Surveyor-Miniでは、スウォーム飛行に加えて、GNSSを利用しにくい環境での自律飛行も開発テーマとしている。試作機には2眼のステレオカメラを搭載し、SLAMによって周囲の特徴を捉えながら自己位置を推定する機能を開発している。

 屋外の開けた場所ではGNSSによってグローバルな位置を取得し、森林内や屋内など衛星測位が不安定になる場所では、ステレオカメラを使ったSLAMでローカルな位置推定を補う構成を想定する。これが実現すれば、災害現場で森林や建物内部へ進入し、複数機が自律的に捜索するといった運用につながる。

 ただし、この機能はまだ開発段階だ。SLAMは画像処理の演算負荷が大きく、現在の試作機に搭載するプロセッサーでは処理能力が不足しているという。開発チームはより新しいプロセッサーを採用したAI演算モジュールへの更新を進めており、SLAMの実用性を高める計画だ。

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