6月9日、屋内点検用小型ドローンの開発と販売を手掛けるERI Roboticsは、警視庁大崎警察署と「大規模災害発生時における小型ドローン運用に関する協力協定」を締結した。首都直下地震などによって建物が倒壊した際、同社は保有する小型ドローンとオペレーターを提供し、建物内部の捜索活動を支援するという内容だ。
災害時におけるドローン活用は近年急速に広がっており、自治体や警察、消防とドローン事業者との連携協定も各地で進んでいる。しかし、その多くは上空からの被害状況確認や情報収集を目的としたものだ。大崎警察署によると、倒壊建物内部への進入を想定した小型ドローンの運用について、警察と企業が協力協定を締結する事例は全国でも初めてだという。
大規模地震では、倒壊した建物内に取り残された被災者の有無を迅速に確認し、救助活動につなげることが重要となる。一方で、建物内部は二次崩落の危険が高く、救助隊員がすぐに進入できないケースも少なくない。そのため近年は、狭隘空間を飛行できる小型ドローンを活用し、救助隊が進入する前に内部状況を把握する取り組みが国内外で注目されている。
大崎警察署ではこうした課題を踏まえ、2026年に入ってから建物内部で運用可能な小型ドローンの協力企業を探していた。その中で、署管内に本社を置くERI Roboticsが協力を申し出たことで、今回の協定締結に至った。
協定締結式には、大崎警察署の滑川寛之署長とERI Roboticsの藤本高史社長が出席し、協定書を取り交わした。そして、締結後には同署の地下駐車場において、実際の災害現場を想定した合同訓練が実施された。
倒壊建物内部を捜索する小型ドローン「Small Doctor Crawl」
ERI Roboticsは、配管内部や天井裏、狭隘空間などの点検用途向けに、小型ドローン「Small Doctor」シリーズを開発・製造している。用途や環境に応じて複数の機種を展開しており、インフラ点検や設備保守などの現場で活用が進んでいる。
今回の訓練で使用されたのは、シリーズ最小クラスの「Small Doctor Crawl」だ。機体重量は約400g、全長・全幅はともに18.5cmというコンパクトなサイズながら、最大70mの映像伝送が可能で、約12分間の飛行性能を備える。また、高度維持を支援する各種センサーを搭載しており、GPSが利用できない屋内環境や狭い空間でも安定した飛行を実現し、扱いやすさを特長としたモデルだ。
災害現場では操縦者の熟練度だけでなく、限られた視界の中で確実に飛行できることが重要であり、こうした操縦支援機能は実運用上の大きな強みとなる。
ドローンが先行偵察、救助隊が後続する新たな災害対応モデル
訓練は、建物が倒壊し内部に要救助者が1人取り残されたという想定で実施された。まず、倒壊建物の進入口を模した高さ・幅約1mの木箱内部へSmall Doctor Crawlが進入。その後、段差のあるがれきや障害物を回避しながら飛行し、内部に取り残された被災者役の位置を確認した。ドローンから送信されるリアルタイム映像を基に、大崎警察署の救助隊員が進入口からほふく前進で内部へ進入。がれきを撤去しながら被災者へ接近し、救出活動を行った。
この訓練は、ドローンが「空飛ぶカメラ」として機能するだけでなく、救助隊に先行して危険区域へ進入する「先遣偵察機」として活用できることを示している。倒壊建物内部の状況を事前に把握できれば、救助隊員の安全確保だけでなく、救助活動の迅速化にもつながる。
今後、大崎警察署では署員によるドローン運用体制の構築も進める予定だという。訓練後には署員が実際にSmall Doctor Crawlを操縦する体験も行われ、操縦技術や運用ノウハウの習得に向けた取り組みも始まった。協定締結式で滑川署長は、「迅速かつ的確に被災状況を把握することが求められる中で、ドローンは大きな力を発揮するものと期待しています」と述べた。また、ERI Roboticsの藤本社長は、「今回の協定をきっかけに、災害時の捜索活動におけるドローン活用がさらに普及していけばと思います」と話した。
災害対応分野では、上空からの情報収集に加え、倒壊建物や地下空間、インフラ内部など人が容易に立ち入れない空間でのドローン活用が注目されている。今回の協定は、ドローンを単なる撮影・監視ツールではなく、人命救助を支援する実践的な装備として活用する新たなモデルケースとして注目されそうだ。
