登録講習機関とは、国家資格である無人航空機操縦士の取得に必要な講習を実施する機関として、国土交通省が登録した民間機関のことを言う。

 無人航空機操縦者技能証明(技能証明)を取得するには、原則として学科試験、実地試験、身体検査に合格する必要があるが、登録講習機関において講習を受けて修了審査に合格した場合には実地試験が免除される。

登録講習機関を利用するメリット

図版:登録講習機関を利用するメリット
(出所:資料をもとにせりぽよが作成)

 登録講習機関を利用して技能証明を取得しようとする者は、学科試験対策となる学科講習と実地講習を受け、実地講習後には指定試験機関の実地試験の代わりとなる修了審査を登録講習機関で受験する。これにより、技能証明取得を効率的に進めることが可能だ。

 技能証明試験で不正行為が認められた場合には、試験の停止や合格の無効、一定期間の受験拒否などの措置がとられる可能性がある。

登録講習機関の種類と講習内容

 登録講習機関は、一等無人航空機操縦士(一等資格)の講習を行う「一等登録講習機関」と二等無人航空機操縦士(二等資格)の講習を行う「二等登録講習機関」の2種類に分類される。

 一等資格向け・二等資格向けの基本的な講習に加えて、「夜間飛行」「目視外飛行」「重量25kg以上の機体」の限定解除に対応した登録講習機関は多いが、すべての登録講習機関が対応しているとは限らない。

 登録講習機関はそれぞれ、一等資格・二等資格の区分以外に、以下のような区分に分かれて限定解除に対応している。これらの講習および修了審査にて必要な技能を有すると認められた場合は、取得した項目における無人航空機操縦士としての特定飛行が認められる。

図版:登録講習機関が実施可能な講習分類
(出所:資料をもとにせりぽよが作成)

  • 無人航空機の種類(機体の種類)
    回転翼航空機(マルチローター)
    回転翼航空機(ヘリコプター)
    飛行機(固定翼)
  • 無人航空機の種類(機体の重量)
    最大離陸重量25kg未満
    重量制限無し
  • 飛行の方法
    目視内飛行
    昼間飛行
    目視外飛行
    夜間飛行

登録講習機関における講習内容

 無人航空機の種類(機体の種類・重量)、飛行の方法、等級などの区分を設けている。講習は学科講習と実地講習に分かれ、学科講習は対面またはオンラインで行われる。オンライン講習の場合は、講習の効果を測定するための修了確認試験を行うことが求められることがある。

 登録講習機関が実施する講習においては、大まかに以下のような規定が存在する。

  • 対面により行う学科講習の受講者の数は、おおむね50人以下であること。
  • 実地講習の受講者の数は、一人の講師に対して、おおむね5人以下であること。
  • 録講習機関は、次に掲げる安全を確保するための措置を講じた上で、実地講習を実施すること。
    - 無人航空機の点検、監視員の配置その他の危険を防止するための措置。
    - 事故が発生した場合における救助体制の確立。
    - その他実地講習を行う場合において、適当と認められる措置。
  • 実地講習または修了審査は、別表第二(実地講習または修了審査を行うために必要な施設および設備の基準)の上欄に掲げる施設および設備であって、同表下欄に掲げる基準に適合するものを用いて行われるものであること。
  • オンラインで講習を行う場合は、当該講習は、別表第三(オンライン講習の実施基準)で定める基準に適合するものであること。

▼国土交通省 - 登録講習機関の教育の内容の基準等を定める告示
https://www.mlit.go.jp/koku/content/001743806.pdf

登録講習機関の要件

 登録講習機関として登録するには、講師、施設・設備それぞれで要件を満たす必要がある。

 講師は18歳以上かつ過去2年間に講習事務で不正を行っていない者、航空法の刑の執行が終わってから2年を経過していない者ではないことなど、必須要件を満たさなければならない。

 一等講習機関の講師は、登録時に以下いずれかの要件を満たす必要がある。

  • 一等無人航空機操縦士の技能証明を有し、1年以上の飛行経験を有する者
  • HP掲載講習団体などで1年以上の講師の経験があり、直近2年間で1年以上の飛行経験かつ100時間以上の飛行実績を有する者。ただし、回転翼航空機(マルチローター)の講師については、2025年12月5日をもってこの条件を撤廃する。

 二等講習機関の講師については、以下のふたつの要件のうちどちらかを満たした者のみが講師として登録可能だ。

  • 二等無人航空機操縦士の技能証明を有し6か月以上の飛行経験を有する者
  • HP掲載講習団体などでの6か月以上の講師経験と直近2年間で6か月以上の飛行経験かつ50時間以上の飛行実績を有すること。ただし、回転翼航空機(マルチローター)の講師については、2025年12月5日をもってこの条件を撤廃する。

▼国土交通省 - 登録講習機関の登録等に関する取扱要領
https://www.mlit.go.jp/koku/content/001859413.pdf
▼国土交通省 - 登録講習機関の講師条件の経過措置撤廃の期限について
https://www.mlit.go.jp/koku/content/001859418.pdf

設備と施設の要件

 設備・施設の要件としては、主に以下のようなものがある。なお、機体の最大離陸重量が25kg未満かそれ以上かによっても、広さ・大きさの要件に違いが生じる。

実習空域(実地講習において用いるものに限る)

  • 実地講習に係る必要履修科目の講習を適切かつ安全に行うことができるものであること。
  • 原則として占用することができるもの(借り受けているものを含む)であること。

実習空域(修了審査において用いるものに限る)
 修了審査においてマルチローターを用いる場合は、次に掲げる基準に適合するものであること。

  • 修了審査を適切かつ安全に行うことができるものであること。
  • 原則として占用することができるもの(借り受けているものを含む)であること。
  • 無人航空機講習の修了審査を行う場合に占有する空域は、次に掲げる修了審査に応じ、それぞれ次に定める大きさ以上とすること。なお、無人航空機操縦者技能証明の資格の区分によらず、共通した基準とする。
    - 最大離陸重量25kg未満についての限定をする修了審査:縦13m、横21m、高度5mの空域
    - その他の修了審査:縦32m、横35m、高度12mの空域

▼国土交通省 - 登録講習機関の教育の内容の基準等を定める告示
https://www.mlit.go.jp/koku/content/001743806.pdf

実習および修了審査に使用する無人航空機の要件

 実習用無人航空機として修了審査に用いる機体の要件も以下のように決められている。

実習用無人航空機(修了審査において用いるものに限る)

  • 修了審査の内容を適切かつ安全に行うことができるものであること。
  • 無人航空機の無線操縦用の送信機との組み合わせ:二つの操作棒で前進と後進、上昇と下降、左右移動、左右旋回が可能な送信機により、無人航空機の操作が可能であること。
  • 無人航空機の大きさ:プロペラを展開させて飛行させる状態とした場合に、対角上のプロペラ同士の中心点を結んだ線の長さが、200mm以上であること。
  • 風速毎秒5mでも飛行可能であること。ただし、屋内など風の影響を受けない場合を除く。
  • 修了審査を行う環境において、最低十分以上の飛行が可能であること。
  • 姿勢安定機能により、無人航空機の姿勢が安定して保たれること。
  • 位置安定機能により、無人航空機の水平方向および垂直方向の位置が安定して保たれること。
  • 位置安定機能による水平方向の位置の安定を、送信機で解除可能であり、位置安定機能なしに飛行可能であること。
  • 無人航空機と組み合わせる送信機の機能により、修了審査を受ける受講者が操縦する間においても、当該修了審査を行う審査員および修了審査員を補助する者が、受講者の保持する送信機とは異なる送信機を用いて、受講者に代わり操縦を行うこと(オーバーライド)ができること。ただし、当該受講者、修了審査員および修了審査員を補助する者並びに修了審査を行う空域周辺の安全を確保できる場合は、この限りでない。
  • 無人航空機の製造会社が求める適切な整備が適切な期間で実施されており、機体仕様通りに飛行できる状態であること。
  • プロペラガードを装着できること。ただし、ネットまたはアクリル板等により、修了審査を受ける受講者および当該修了審査を行う審査員および修了審査員を補助する者を、飛行中の無人航空機から保護することができる場合を除く。
  • 夜間でも下方より無人航空機の前後左右を識別することができる灯火を有すること。ただし、法第132条の86第2項第1号の飛行方法についての限定をする場合を除く。
  • 無人航空機にカメラを搭載しており、修了審査を受ける受講者および当該修了審査を行う審査員が、カメラで撮影した画像から無人航空機の周辺および地上の状況を確認できること。ただし、法第132条の86第2項第2号に規定する飛行の法についての限定をする場合を除く。
  • 最大離陸重量25kg未満についての限定を伴わない修了審査の場合は、最大離陸重量25kg以上の無人航空機であること。

▼国土交通省-登録講習機関の教育の内容の基準等を定める告示
https://www.mlit.go.jp/koku/content/001743806.pdf