ビル風とは、高層ビルや大型建造物によって引き起こされる局地的な強風現象のことを言う。
都市部の気象環境に大きな影響を与え、歩行者の安全や快適性に関わる重要な問題となっている。ビルの形状、配置、周辺の地形などによって、様々なタイプのビル風が発生する。
剥離流(はくりりゅう)とは
剥離流(はくりりゅう)は、ビルの風上側表面を流れる風がビルの角やエッジで剥がれ、建物の側面や上面に沿って流れる周囲よりも風速が早い風が発生する現象を指す。
風速が速いほど、また建物が高いほど剥離流は強くなる傾向がある。剥離流は、建物の角で特に強くなることが多く、風害の原因となることがある。
建物の形状によっては、渦を巻くように風が流れる場合もあり、これを剥離渦(はくりうず)と言う。
ビルの側面や角で風が剥がれて生じる乱流であり、突風的な性質を持ち、歩行者に危険を及ぼす可能性がある。ビルの角を丸くすることで剥離流を軽減できることがある。
吹き降ろし(ふきおろし)とは
吹き降ろし(ふきおろし)は、高層ビルの上部から風が地表に向かって急激に吹き降りる現象のことだ。
吹き降ろしは、建物の高さが高いほど、また風速が速いほど強くなる傾向がある。そして、ビルの上部で風が加速し、ビルの壁面に沿って地表に向かって吹き降りるため、地表付近で強風が発生する。
建物の風下側で突風となることがあり、歩行者などに影響を与える可能性があるため注意が必要だ。
建物の風下側に渦を形成することがあり、これを後流渦(こうりゅううず)と言う。
逆流(ぎゃくりゅう)とは
逆流(ぎゃくりゅう)はビルの風上側で風がビルにぶつかり、風下側に回り込む際に発生する逆向きの風のことを言う。
逆流は、吹き降ろしによって地上付近の気圧が高くなることで発生する。風がビルにぶつかると、風上側で圧力が高まり、風がビルの側面を回り込んで風下側に流れるが、この際、風下側で逆向きの風が発生し、風の流れが複雑になる。
建物の風下側で渦を形成することがあり、これを逆流渦(ぎゃくりゅううず)と言う。逆流は、建物の風下側で風速が弱くなる領域を形成することがある。
ビルの風下側に生じる逆向きの流れであり、風下側に渦を形成し、予想外の方向から風が吹くことも多い。逆流によるゴミの滞留など、環境問題の原因となることもある。
谷間風(たにまかぜ)とは
谷間風(たにまかぜ)は高層ビル群の間で剥離流と吹き降ろしの風が合わさり、風速が増加する現象だ。複数のビルの間に風が集中して起こる現象であり、風の通り道となり、局所的に非常に強い風が吹くことがある。
建物によって風の流れが収束することで、風速が増加する傾向がある。建物の間隔が狭いほど、また風速が速いほど強くなりやすい。
建物の間の空間で渦を形成することがあり、これを谷間渦(たにまうず)と言う。谷間風は、ビルの配置や向きによって、その強さや方向が大きく変わる。
街路風(がいろふう)とは
街路風(がいろふう)とは、規則正しく整列したビル群の間を風が通る時、多くの谷間風が流れ込んだ際に発生する凄まじい突風のことを指す。風向きによっては、街路風により街路全体が強風域となることがある。
街路の方向と風向が一致する場合に、風速が増加しやすい。加えて、街路の幅が狭いほど、また建物が高いほど強くなる傾向がある。
交差点などで渦を形成することがあり、これを街路渦(がいろうず)と言う。
