DIPSとは、Drone/UAS Information Platform System(ドローン情報基盤システム)の略で、国土交通省への飛行許可・承認申請をオンラインで行うことができる申請システムのこと。2022年12月5日以降からドローン情報基盤システム2.0(DIPS2.0)として刷新され、機体登録、技能証明の取得、飛行の許可・承認申請、飛行計画の通報、事故報告、機体認証といった、航空法上のドローンの手続きがすべてこのシステムに統合された。

 航空法では、無人航空機の飛行について2段階の仕組みを取っており、航空法で定められた飛行禁止空域を飛行する場合や、航空法に定められる飛行方法によらない飛行であっても国土交通省に飛行申請を行い、その飛行の安全性が認められれば飛行の許可・承認が取得できる仕組みになっている。

システム構造

 DIPS2.0については機体登録に加えて、飛行の許可・承認や技能証明、機体認証、飛行計画の通報といった手続きすべてに共通するIDとパスワードを取得する必要があり、そのためにはマイナンバーカードなどを使って本人確認をする必要がある。DIPS2.0については機体登録に加えて、飛行の許可・承認や技能証明、機体認証、飛行計画の通報といった手続きすべてに共通するIDとパスワードを取得する必要があり、そのためにはマイナンバーカードなどを使って本人確認をする必要がある。

 機体登録は「無人航空機の登録申請」メニューで本人確認を行った上で必要な機体の情報を入力して登録を済ませ、申請受付完了のメールが届いたら同メニューの中から機体を選び、クレジットカードなどで申請手数料を支払うとDIPS2.0上の機体の欄に登録記号が交付されるという流れである。なお、機体の登録は個人・法人のいずれかで行うことと合わせて、使用者・所有者をそれぞれ登録することとなる。

 DIPS2.0は、アカウントを開設することでラジオボタンやプルダウンメニューの選択で申請書を作成することができ、申請書の提出も提出先を選択するだけで簡単に行える。加えて申請履歴の管理やパイロット・機体の登録が可能となっており、複数回申請書を作成する際や過去に作成した申請書をもとに一部変更等をして申請書を作成する際にとても便利な機能となっている。また、申請書のフォーマットが変更された際にもシステムにはすぐに反映されるので、Wordファイルによる申請でフォーマットが古いままのファイルで申請するなどのミスを防ぐこともできる(包括申請の年次更新時など)。ただし、簡単に作成できるだけに、申請内容の理解が不十分な状態でも申請書を提出できてしまうという面もある。申請の際には申請内容と飛行マニュアル(特に標準マニュアル)の内容を十分に理解し、申請を行う必要がある。ウェザーニューズはDIPS2.0の飛行計画通報機能に対して、全国のドクターヘリの飛行情報を提供し、ドローンの飛行空域にドクターヘリが接近してきた際には、登録したメールアドレスにアラートを送信するという機能を提供している。

 飛行申請のほか、2022年12月5日から義務化された事故・重大インシデントの報告は、DIPS2.0に設けられた「事故等の報告」メニューから行う。事故等の報告をしない、または虚偽の報告を行った場合は、航空法第157条の10第2項に従い、30万円以下の罰金が科せられる。なお、国土交通省によると2023年3月7日時点で、2022年12月5日以降の新しいルールに基づく事故等の報告は7件行われており、その中には1件の人の死傷等の報告が含まれている。

DIPSとFISS(飛行情報共有システム)

 DIPSは2018年4月、それまで書面で行っていた飛行に関する許可・承認手続きを電子化するために開設されたものだが、それとは別に2019年4月、同年7月の飛行計画の登録義務化を見据えて「飛行情報共有システム(FISS:Flight Information Sharing System)」が開設されている。同システムはドローンを飛行させる日時や空域、操縦者、機体といった情報を入力し、ドローン間で飛行の情報を共有するばかりでなく、有人機とも共有することで、衝突や接触を防ぐというものだ。ただし、両者は別のドメインを持った違うシステムであり、操縦者や機体の情報は共有されず、IDやパスワードも別のものとなっていた。そこで国土交通省ではすでに2018年頃からこれらシステムの高度化、さらには次期システムの要件検討、整備といった課題を「空の産業革命に向けたロードマップ」の中で挙げている。そして新しいシステムは、2022年6月20日には航空法上の機体登録制度の施行に合わせて、その一部が稼働することとなった。機体登録制度に関してはこの施行からさかのぼること半年、2021年9月20日から事前登録が始まるのに合わせて「機体登録ポータルサイト」が開設されている。ここで登録された機体の情報は、そのまま後に稼働するDIPS2.0へと引き継がれることとなる。
▼DIPS
https://www.dips.mlit.go.jp/portal/

利用情報

 申請数は、平成28年度に13,535件だったものが無人航空機の利活用の増加に伴い年々増加(令和3年度には75,049件)しており、オンライン申請の仕組みによってその業務の効率化を図っている。
▼国土交通省-無人航空機飛行に係る許可承認申請件数の推移
https://www.mlit.go.jp/common/001321576.pdf