夜空に数百から数千機のドローンが舞い、光の図形や文字を描く。ドローンショーは、自治体のイベントや企業のプロモーションなどで実施されるようになった。2025年の大阪・関西万博でも、会期中は毎日1,000機によるドローンショーが行われた。一方、天候の影響を受けにくく、屋外より小規模な体制で実施できる屋内のドローンショー(インドアドローンショー)も、式典や学校行事などに活用の場を広げている。2021年からこの分野に取り組むROBOZの石田代表取締役に、屋内ショーの技術や運用、事業性について聞いた。
航空法上の申請負担を抑え、短時間で設営
石田氏は、2017年に岐阜県でドローンスクールを本事業とするROBOZを創業。2021年に中国企業が開発した屋内用ドローンショーのシステムを導入し、ROBOZはいち早く屋内ドローンショーを手掛けるようになった。
屋外と屋内のドローンショーでは、飛行環境や運用体制が大きく異なる。屋外では、数百から数千機規模の機体数で実施され、GPS測位によってドローンの制御は常に安定している。一方、屋内は空間が狭いことが多く、10~60機程度と規模は小さい。GPSが受信できないため、UWB(超広帯域無線)や画像認識などの方法で機体の位置を制御しており、GPSに対して機体の制御技術は難しくなる。
屋内ドローンショーのひとつのメリットとして挙げられるのが、航空法に基づく飛行許可・承認を必要としない点だ。壁や屋根に囲われた環境は屋内とみなされ航空法に該当せず、屋外ドローンショーと比べて申請手続きの負担を削減できる。さらには、ドローンショーの事業を始めようと考えた時に、屋外と屋内では機体の購入数も大きく異なり、屋内であれば初期投資を大幅に抑えることが可能になる。
石田氏は、現場の設営や安全管理にも触れ、「屋外ドローンショーでは、イベント規模にもよりますが、10~15人程度で設営しています」と話す。その一方で、「屋外は夜間に実施されるため、15時頃から現場に入り、天候の状況を確認しながら本番に備えます。室内であれば、本番の約1時間前から設営を始め、関わる人数も屋外ほど多くはありません」と説明する。
屋内ドローンショーは、会場を暗くすれば昼間でも実施でき、同じ会場で1日3回程度行うことも可能だという。また、30機程度であれば機材一式を乗用車1台に積載できる。天候によるリスクが無く、開催日時が決まっている式典や企業イベントとの相性が良いなど、実施するサービサーとしては屋外ドローンショーよりも運営しやすいのだ。
石田氏は直近の屋内ドローンショーに対する事業動向について、「2年程前から屋内ドローンショーに対する問い合わせが増加しています。例えば、自治体や学校の行事・式典、個人利用ですと結婚披露宴での実施なども増えています。特殊な例では、日本企業を介して海外の国際会議から相談を受けるケースも出てきました」という。以前はイベントに付随する演出のひとつとして相談されることが多かったが、企画段階から屋内ドローンショーの予算を確保したうえで依頼される案件も増えているという。
同社がこれまでに実施してきた例は、企業や自治体の周年式典、成人式、学校等の創立記念行事、結婚披露宴、スポーツイベント、音楽イベントなど幅広い。屋外イベントと組み合わせた事例では、夕方から屋内施設でドローンショーを実施した後、そのまま夜間は屋外のイベント会場へと誘導した例もあったという。
UWB測位で数十機を制御
同社は、2023年から中国・Makerfire社(メーカーファイア社)が開発した屋内ドローンショー用の機体「LiteBee Star」を使用している。同機の飛行制御はUWBを採用している。これは、飛行エリアの周囲にアンテナを配置することで各機体の位置を計測する方法で、設定した範囲内において安定した飛行を実現する。加えて、気圧センサーやToFセンサー、オプティカルフローなどを搭載しており、高度維持等の精度を高めている。
LiteBee Starは、最大130機の群制御が可能で飛行エリアは50m四方、飛行高度は最大8mまで対応する。屋外ドローンショーでは、企業ロゴやキャラクターを光で描くことが多いが、屋内ドローンショーのように機体数が少ない場合、形を作らずに光で演出を行う例も少なくない。機体数を30機程度に増やすことで、ハートや数字、簡易的なロゴなども表現できる。同機の国内販売も手掛ける石田氏は、LiteBee Starの特徴として演出の要となる発光の機体構造を挙げた。「ドローンのボディとなる上下のカバーを半透明とし、上下全体がLEDによって光ります。一般的なドローンショー用の機体は、ボディの下部のみが光る設計が多いですが、上下が発光することで各機の光が大きく、鮮やかな演出が可能となります」と説明した。なお、機体のLEDは1,600万色以上の発光に対応し、音楽やステージ上の演出と同期させることもできるという。
同社はMakerfire社と日本国内における独占販売契約を結び、機体の販売に加えて導入研修や運用支援を行っている。国内で提供する製品は品質管理のため、同社が出荷前に検品と飛行試験を実施し、アフターサービスとして修理も請け負っているという。石田氏は頻繁にMakerfire社の本社を訪れ、メーカー側と運用上の課題や改善点を共有し、常に機体のアップデートに目を向けている。
少人数で運用できる事業モデル、ROBOZは年間約100公演を実施
近年、実施回数が増加傾向にある屋外ドローンショーは、自治体のイベントや企業のプロモーション活動などで注目されており、機体台数やエリアの規模にもよるが、実施には約500万~1,000万円前後の予算が必要とされる。これに対し、同社が請け負う屋内ドローンショーは、内容や機体数に応じて20万~50万円程度で提供しており、イベントの主催者としては予算を確保しやすい価格帯となっている。
このような低価格で提供できる理由には、30機程度の規模で実施するのであれば、設営及び運用の人員として2〜3人いれば実施が可能な点にある。一方、屋外ドローンショーでは冒頭で述べた通り、10~15人程度の人員が必要なうえ、数百機のドローンを並べたり、実施の数時間前から第三者の立ち入り制限を設けたり、さらにはイベント終了後の撤収作業など、人員の拘束時間も非常に長い。屋内ドローンショーが小規模で実施できるメリットは、提供する価格帯にも影響しているのだ。
LiteBee Starの販売先は、屋内ドローンショーを新事業として展開する企業がほとんどだ。同社では、ドローンショーに必要な機材や導入講習などを含む10機セットを約200万円で販売。30機では約500万円が目安になるという。初期投資としても始めやすい価格となっている。一方、屋外ドローンショーで使用する500機のシステムは、約7,000万~8,000万円と高額だ。自社で機体を保有して運用する事業者は限られていると説明する。
ドローンショーを事業化するに当たっては、機材を揃えるのに加え、ドローンで演出を行うための制作技術が必要だ。この点においても屋外と屋内では大きく異なる。屋外ドローンショーでは、高精度なキャラクターやロゴの表現が重要となり、3DCGの制作ソフトを使いこなせる人材が必要となる。アニメーション制作を外注すると、一つの演目に100万~200万円かかることもあるという。一方、屋内ドローンショーは機体数が少ないことから、数百機のドローンで表現するのに比べればそれほど複雑ではない。同社では、機材を購入する時に演出のための講習を2日間提供しており、基本的なソフトの操作を習得できる。ただし、音楽に合わせて機体を動かし、複数の図形や文字にストーリー性を持たせるには、演出制作の経験が必要だという。石田氏は、「ドローンショーは、基本的な演出は作りやすいですが、ストーリー性を持たせて緻密に詰めていけば、奥は限りなく深くなります」と話す。
同社は年間約100回の屋内ドローンショーを実施しているが、その約3割は学校の体験教室などの無償公演だという。屋内ドローンショーは周知が行き届いていないため、石田氏は販売先の導入企業にも、まずは地域や取引先にショーを披露し、認知を広げることを勧めている。石田氏は、「事業者が増えなければ、市場ができません。イベント・行事の選択肢に挙がるほどには、まだ認知されていないと思います」と説明した。
高校のプログラミング教育にも活用
同社は、ドローンショーを使った教育にも力を入れている。子供向けのScratch(プログラミングソフト)で操作するRyze Techのトイドローン「Tello」と、本格的なプログラミングであるPythonの間を埋める選択肢として、LiteBee Starが中高生向けの授業に適しているという。石田氏は「自分で作ったプログラムが、ドローンによる図形や光として成果となり、それが生徒にとっての楽しさ及び学びになっています」と話す。提供した三重県内の高校では、生徒が制作した演目を全校生徒や地域住民の前で実施する授業を約3年間継続して開催しているという。
他業種との組み合わせで用途を広げる
ドローンショーは、単独の演目として見せるだけでなく、ステージや広告などと組み合わせた活用も広がっている。
同社は今後、ステージ演出など他のコンテンツとドローンを組み合わせ、屋内ならではの活用を広げる方針だ。ダンス&ボーカルグループのミュージックビデオでも、ドローンを使った演出に協力している。石田氏は、「ドローンを主役にするだけでなく、イベントの背景を彩る装飾や煌びやかさを演出するといった使い方も海外では人気があります。室内ならではの手軽さを生かし、用途・表現を広げていきたいと考えています」と今後の展望を語った。
