
ドローンは、種類によって特徴が異なります。各種類には長所・短所があり、ドローンの用途に適した種類を使用することが重要です。
マルチコプター型ドローン
マルチコプター型は、4つ以上のプロペラを持つドローン(プロペラが3つの特殊な構造のものもある)。 垂直離着陸と精密なホバリングができ、安定性も高いため操縦も比較的簡単 です。そのため、空撮や点検、農薬散布、測量などさまざま用途で使われています。ただ、複数のプロペラを高速回転させることで揚力を発生させるため エネルギー効率は高くありません。
マルチコプター型は、もっとも一般的な4つのプロペラを持つ「クワッドコプター」のほかにも、6つのプロペラを持つ「ヘキサコプター」や8つのプロペラを持つ「オクトコプター」があります。 プロペラの枚数が多いと揚力をより強く発生させることができる ため、飛行安定性を向上させたり、最大離陸重量を大きくしたりすることができます。 物流用の機体や大容量の農薬散布機にヘキサコプターやオクトコプターが採用されている のはそのためです。
【主な例】
- 空撮:DJI Inspire 3 、DJI Mavic 3 Pro
- 点検:DJI Matrice 350、Skydio X10
- 農薬散布:DJI Agras T50、マゼックス 飛助DX、NTT e-Drone Technology AC101 connect
- 測量:DJI Matrice 350、DJI Mavic 3 Enterprise、ACSL PF2-AE Survey
ヘリコプター型ドローン
ヘリコプター型は、一般的には揚力と推進力を得るための1つの大きなメインローターと、メインローターが回転する際に発生する反転トルク(回転の反作用)を相殺するテールローターによって機体のバランスを取りながら飛行することができます。
ヘリコプター型も垂直離着陸とホバリングができますが、大きなひとつのメインローターで高い揚力と推進力を得ることができるため、 マルチコプター型と比べてエネルギー効率が高く、最高速度も速い のが特徴です。そのため、 大型資材の運搬や長距離飛行を求められる飛行(長距離物流など)などに利用されます 。ただ、 飛行制御機構がマルチコプター型と比べて複雑 だったり、 メインローターが大型のため接触リスクや事故リスクが高かったりする デメリットもあります。低速時やホバリング時のエネルギー消費が高くなる傾向もあるため、 低速時飛行やホバリングを頻繁に行う用途には向いていない ので注意が必要です。
【主な例】
- YAMAHA FAZER R
- PRODRONE PDH-GS120
固定翼型ドローン
固定翼型は、飛行機型のドローンです。大きな翼と推進力によって揚力を発生させ、高速飛行することができます。 翼で揚力を得るためエネルギー効率も高く、長距離の飛行も可能 です。また、一定の推進力があれば翼で揚力を発生させることができるため、 エンジンやモーターなどの推進装置が停止しても一定距離を滑空することができます。 しかしながら、固定翼型は 垂直離着陸ができないため、離陸や着陸時には滑走路が必要 です。滑走路を用意することが難しい環境では、滑走路を省略するためにカタパルトのような発射装置や手投げ発射に対応した機体の機構を使用することもあります。加えて、 空中でホバリングできない ため、特定の場所で留まるような撮影や観測には向いていません。
固定翼型は基本的に高速で長時間、効率的に飛行することができます。 広範囲の調査や測量、長距離の物流などに用いられることが多くあります。
【主な例】
- AgEagle eBee
- Zipline 機種名不明
VTOL型ドローン
VTOL(Vertical Take-Off and Landing)型は、マルチコプター型と固定翼型の特徴を組み合わせた設計で、 垂直離着陸ができる固定翼型ドローン の一種です。揚力と推進力を生むプロペラと固定翼を併せ持ったデザインとなっており、離着陸に滑走路が必要ないため、 狭いスペースでも運用が可能で地形や環境を選びません。 また、離陸後は翼で揚力を発生させることもできるので、固定翼型のように高速で高効率な飛行ができます。
機体構造はまさにマルチコプター型と固定翼型のハイブリッドとなっており、翼のついた機体本体に対して垂直離着陸やホバリングを主な用途とした4つのプロペラに加えて別途推進用のプロペラ(機体後部など)がついたタイプや、垂直離着陸やホバリングを主な用途としたプロペラの一部が離陸後に推進用にプロペラの軸角度を変化させるタイプ(ティルトローター)など、さまざまなタイプが存在します。そのようなVTOL型の柔軟性と機能性が高い特長を活かして、 中距離の物流や広範囲の測量、監視などさまざまな分野に活用 されており、今後もその活用分野の拡大が見込まれます。とはいえ、マルチコプター型と固定翼型のハイブリッド設計のため 構造が複雑で設計・製造コストが高く、運用にも高度な技術や訓練が必要 となり、まだその活用は限定的なものに留まっています。
【主な例】
- エアロセンス エアロボウイング(AS-VT01K)
- Wingcopter W198
田口 厚
株式会社ORSO Dron é motion(ドローンエモーション)事業部長。主な業務として観光PR空撮動画制作やドローンを活用した観光企画、国家資格講習や企業研修などの講習の企画や実施、ミニドローン「DRONE STAR」シリーズを活用したドローンプログラミングワークショップなど。無人航空機操縦者技能証明登録講習機関講師及び修了審査員、一等無人航空機操縦士、JUIDA特別講師、令和7年度『無人航空機シミュレーター教育規格作成委員会』委員 等。