2026年6月15日、Terra Drone(以下、テラドローン)は、ウクライナ・リヴィウを拠点とする固定翼型無人航空システムメーカーのBesomar(以下、ベソマー)と、偵察用ドローンの提供を目的とした合弁会社(JV)の設立に向けた準備を開始したと発表した。両社連携のもと偵察用ドローン「Terra C1」の展開を目指し、迎撃ドローンと組み合わせた多層型無人防衛ソリューションの構築を進めていく。

写真:飛行する「Terra C1」

 ベソマー社は、固定翼型UAVを中心に、偵察、監視、迎撃、物流支援などに対応する無人航空システムを開発・製造するウクライナ企業。同社は、電子戦(EW)やインフラが限定された現場での運用を想定し、迅速な展開、長時間飛行、現場での保守性を重視したシステム開発に取り組んでいる。

 テラドローンは、2026年3月に防衛装備市場への参入を公表して以降、迎撃ドローン「Terra A1」と固定翼型迎撃ドローン「Terra A2」を中心に製品ポートフォリオの拡充と事業基盤の構築を進めてきた。迎撃ドローン領域に加え、固定翼型UAVによる偵察・監視領域を事業ポートフォリオに追加することで、脅威を「見つける」「把握する」「対処する」までを一体的に支援する多層型無人防衛ソリューションの構築を加速させる方針だ。

 低空・低速で飛行する無人機による脅威が拡大する中、防衛領域では脅威を早期に発見し、状況を把握したうえで適切な対応につなげることが重要となっている。偵察・監視用UAVと迎撃ドローンを組み合わせることで、防衛ソリューション全体の実効性を高めることが期待される。

 また、電子戦環境下やインフラが限定された現場での運用を想定した、機動性・耐環境性・コスト効率を備えた無人航空システムへの需要が高まっている。調査会社MarketsandMarketsによると、戦術UAV市場は2025年の52.7億米ドルから2030年には78.6億米ドルへ拡大し、年平均成長率は8.3%と予測されている。なかでも防衛機関によるISR(情報収集・警戒監視・偵察)能力向上への投資拡大を背景に成長が見込まれている(※1)

※1 MarketsandMarkets “Tactical UAV (Drone) Market by Wing Type, Application, MTOW, Range, and Region – Forecast to 2030”

 今回のJV設立は、テラドローンの防衛事業における製品ポートフォリオを拡充し、偵察・監視領域における事業基盤を強化することを目的としている。Terra A2は、広域対応や長時間哨戒、長距離迎撃を想定した前段防衛、Terra A1は、高速発進、即時迎撃、近距離対応、拠点防護を想定した最終防衛レイヤーとして、近距離に侵入した脅威への対応を想定している。この迎撃レイヤーにTerra C1の偵察・監視機能を組み合わせることで、脅威の早期把握から迎撃、現場支援までを一体で支援する体制の構築を進めていく。

 Terra C1は、3時間の長時間飛行、50〜110kmの運用半径、10倍光学ズームを備えた偵察・監視用途の固定翼型UAV。広域を飛行しながら遠方の状況を把握できるほか、電子戦(EW)環境下での位置把握・監視にも対応。物流用途にも活用可能な最大4kgの積載性能を備えている。ベソマー社のシステムは、GPS妨害環境下での運用、カタパルト発進、ワンボタン着陸、フィールド保守など厳しい運用環境を前提に設計されており、現場での迅速な展開と継続的な運用を支援する。

取り組み概要

  • 偵察・監視領域の強化
     テラドローンは、ベソマー社が有する固定翼型UAVの開発力を活かし、長時間偵察、広域監視、現場情報の把握を支援する無人航空システムの展開を進める。偵察・監視機能を強化することで、脅威の早期把握や任務判断を支援し、防衛事業における提案力を高める。
  • 電子戦環境下における運用対応力の強化
     現代の防衛領域では、GPS妨害や通信妨害など、電子戦環境下での運用対応力が重要な要素になっている。テラドローンは、ベソマー社が現地で培ってきた開発力と事業基盤を活かし、電子戦環境下での運用を想定した無人航空システムの展開を支援していく。これにより、厳しい運用環境下における防衛用途の無人アセットの提案力を強化する。
  • 偵察・監視と迎撃を組み合わせた多層型無人防衛ソリューションの強化
     テラドローンは、近距離向け迎撃ドローンTerra A1と中距離向け迎撃ドローンTerra A2を組み合わせることで、脅威の距離・速度・侵入経路に応じた迎撃手段を選択できる「多層型防衛」ソリューションの構築を進める。これらの迎撃レイヤーにTerra C1の偵察・監視機能を組み合わせ、脅威の早期把握から迎撃、現場支援までを含む多層型無人防衛ソリューションの構築を加速させる。
イラスト:Terra A1・Terra A2・Terra C1による多層型無人防衛イメージ
Terra A1・Terra A2・Terra C1による多層型無人防衛イメージ

 テラドローンは、今回のベソマー社とのJV設立を通じて、固定翼型UAVによる偵察・監視領域への展開を強化し、迎撃ドローン、偵察ドローン、無人ボート等を含む多層的な無人防衛ソリューションの構築を進めていく方針だ。

代表コメント

Terra Drone株式会社 代表取締役社長 徳重 徹氏

 テラドローンは、防衛装備市場への参入以降、迎撃ドローンを中心とした事業基盤の構築を進めてきました。今回のベソマー社とのJV設立は、これまでの迎撃領域に加え、偵察・監視領域まで製品ポートフォリオを広げる重要な一手です。
 防衛領域では、脅威を迎撃するだけでなく、早期に把握し、状況を可視化し、必要な対応につなげることが重要です。ベソマー社の固定翼型UAVに関する開発力と、当社グループのグローバルネットワークを組み合わせることで、偵察・監視と迎撃を一体で支援する多層型無人防衛ソリューションの構築を加速してまいります。

ベソマー CEO ハンナ・マツェンコ(Hanna Matsenko)氏

 ベソマー社は、ウクライナの厳しい運用環境で求められる機動性、耐環境性、即応性を重視し、固定翼型UAVを中心とした無人航空システムの開発に取り組んできました。当社のシステムは、偵察、監視、物流支援など多様な任務に対応することを目指して設計されており、現場で迅速に展開できる統合型ソリューションであることを重視しています。
 今回、グローバルにドローン事業を展開してきたTerra Droneを戦略的パートナーとして迎えることを大変嬉しく思います。Terra Droneの国際的なネットワークと事業開発力を活用することで、当社のシステムをより多くの地域・用途へ展開し、次世代の無人防衛インフラ構築に貢献できると考えています。」