2020年2月25日、設備点検・災害対策・警備監視の領域を中心にドローンによる業務の完全自動化を目指すセンシンロボティクスは、フジタの建設現場において、『SENSYN DRONE HUB』を活用した安全巡視・土木測量の機能検証を実施したことを発表した。

 フジタでは、最新のドローン測量やIoT重機土工の『全工程見える化』を推進しており、その一環として、現場での安全巡視・設備点検を省人化するシステム『SENSYN DRONE HUB』を活用した実証実験に取り組んでいる。2019年2月にもフジタとセンシンロボティクスは共同で実証実験を行っており、今回は新たに工事現場における安全巡視と土木測量に必要な機能検証が行われた。

検証内容

 同実証実験は、福井県敦賀市の北陸新幹線車両基地工事現場にて実施され、『SENSYN DRONE HUB』が、建設現場でのドローン自動運用に必要な要件を満たせるか、安全巡視・土木測量の分野で機能検証が行われた。

① 安全巡視
 目的:建設現場における安全確認・施工進捗の状況把握
 実施内容:『SENSYN DRONE HUB』『SENSYN DC』を連携させ、遠隔拠点から建設現場の様子がリアルタイムに状況把握ができるかを検証。車両基地建設現場(福井県敦賀市)とフジタ本社(東京都渋谷区)の2拠点を映像伝送システムで中継し、複数拠点間接続での映像品質を検証。

② 土木測量
目的:『SENSYN DRONE HUB』による測量業務の自動化
実施内容:『SENSYN DRONE HUB』のスケジューリング/データリンク機能を活用し、ドローン飛行によるデータ取得~クラウドへのストレージまでの一連の動作を完全自動化できるかを検証。

検証結果

①安全巡視
 車両基地建設現場とフジタ本社の2拠点を映像伝送システムで中継し、拠点間接続時の映像品質の検証を行いました。実際の安全巡視業務を想定し、遠隔拠点からカメラ操作・自動航行の一時停止/再開が実施できるかを検証し、警備における一次スクリーニングを行うに足る機能を持ち合わせていることを確認した。

2拠点での映像品質の確認。本社から現場の様子がリアルタイムでわかる。
作業現場にて要救助者が確認できるかを検証。倒れている人が認識できる映像品質を持ち合わせていることを確認。

③ 土木測量
『SENSYN DRONE HUB』が提供するスケジューリング機能(飛行ミッション予約機能)も併せて検証を行い、定時刻になるとプラットフォームからドローンが自動的に離陸し、事前にシステム上で指定したルート通りの正確な飛行を実行した後、完全自動で精密な自動着陸を実行する事を確認した。
また、スケジュール飛行で取得したデータは、機体から自動アップロードされ、クラウド上で一元管理される。撮影したデータを元にオルソ画像※1を作成。土木測量業務の無人運用に足る必要機能を有していることを確認した。

取得したデータを元に作成した画像。このデータを元に面積及び距離などを計測する。

※1オルソ画像...写真上の像の位置ズレをなくし空中写真を地図と同じく、真上から見たような傾きのない、正しい大きさと位置に表示される画像に変換したもの。オルソ画像は、写された像の形状が正しく、位置も正しく配置されているため、地理情報システム(GIS)などにおいて、画像上で位置、面積及び距離などを正確に計測することが可能で、地図データなどと重ね合わせて利用することが可能。

今後の展望

 数年に渡る長期工事が一般的な大規模土木建設においては、現場の安全管理ときめ細やかな進捗管理が重要だが、離着陸・撮影・データ転送・解析までをすべて自動で行うことが可能な『SENSYN DRONE HUB』を活用することで、それらの業務の効率化・高度化を進め、社会課題でもある人手不足の解消や作業者の安全確保に貢献できるソリューションを開発していく。
 特に工事の進捗管理に必要な測量業務において、ドローンによる航空写真測量は、従来の地上光波測量と比較してコスト70%程度削減、工程は60%程度短縮できるという調査結果もあり(同社調べ)、その効率性から既に土木建設現場での活用が進んでいる。今後は『SENSYN DRONE HUB』を高精度な写真測量に必要なアップデートを行い、工事進捗管理の完全自動化に向けた開発を行っていく。
 また、同実証実験ではオペレーターの目視可能範囲での飛行検証を行ったが、離陸から着陸までのすべてのミッションを作業員の介在なく実施出来る事が確認でき、ドローンの無人運用に足る必要機能を持ち合わせている事を確認できた。将来的な完全自動運用に向けて、効果測定・実証実験を継続していく予定、としている。