2019年11月6日、NVIDIAは、エッジにおけるロボティクスデバイスおよび組み込み型コンピューティングデバイスに適した、極小サイズでパワフルな性能を持つ AI スーパーコンピューター、Jetson Xavier™ NX を発表した。

 クレジットカードよりも小さい、コンパクトなフォームファクターで、エネルギー効率に優れたJetson Xavier NX モジュールは、最新のAIワークロードの処理で最大 21 TOPS の演算能力を備え、電力消費量はわずか10ワットである。

 Jetson Xavier NXは、性能の向上が要求される一方、サイズ、重量、共有電力または費用の制約がある組み込み型エッジ コンピューティングデバイスに、新たな可能性をもたらす。たとえば、小型の商用ロボット、ドローン、工場のロジスティックスおよび生産ライン向けのインテリジェントな高解像度センサー、光学検査、ネットワークビデオレコーダー、携帯医療デバイスならびにその他のインダストリアル IoT システムに利用できる。

 NVIDIAのバイス プレジデント兼エッジ コンピューティング担当ジェネラル マネージャーのディープゥ タッラ (Deepu Talla)氏は、「AI は、産業を転換させる最新のロボティクスおよび組み込み型デバイスの実現技術となっています。小さなフォームファクターおよび省電力が要件となっているこれらのデバイスの多くは、AI機能の追加に制約がありました。Jetson Xavier NX により、NVIDIA のお客様とパートナーは、デバイスのサイズや消費電力も増やすことなく、AI 機能を劇的に向上できるようになるでしょう」と述べた。

 Jetson Xavier NXは、最大で14 TOPS (10W の場合)または21 TOPS (15W の場合)の演算能力を持ち、Jetson Nanoのフォームファクター(70x45mm)で複数のニューラル ネットワークを並行に実行し、複数の高解像度センサーを同時に処理する。 Jetson Xavier NX は、すべてのJetson製品と同じ CUDA-X AI™ ソフトウェア アーキテクチャがベースになっているので、すでに組み込み機器を構築している企業は、マーケットへの投入時間の短縮ならびに開発費用の削減が可能となる。

 NVIDIA のソフトウェア アーキテクチャアプローチの一環として、Jetson Xavier NXは、現代的かつ複雑なAIネットワーク、ディープラーニングのための高速化ライブラリ、ならびにコンピュータビジョン、コンピュータグラフィックス、マルチメディアなどを実行する、包括的なAIソフトウェアスタックである、NVIDIA JetPack™ software development kitに対応している。

エコシステムからのサポート

 Jetson Xavier NX は、 ロボティクスおよび組み込み型デバイスのエコシステムから強固なサポートを受けている。

各社コメント

・Lockheed Martin 社アプライド アーティフィシャル インテリジェンス担当ディレクター兼チーフ アーキテクト、 リー リソルツ (Lee Ritholtz) 氏
「NVIDIAの組み込み用Jetson製品により、Lockheed Martinのプラットフォームでの組み込み AI ソリューションの研究、開発および展開が加速する。Jetson Xavier NX の優れた性能、小さなフォームファクターおよび少ない電力消費で、当社はエッジでのリアルタイム処理能力をこれまで以上に向上できるようになるでしょう」と述べた。

・武蔵精密工業株式会社代表取締役社長、大塚浩史氏
「当社の目標は、光学検査システムの品質と正確さを劇的に向上させ、Industry 4.0に向けて事業を加速させることにあります。NVIDIA のJetson Xavier NXにより、当社では、光学検査システムの規模と電力を強化する必要なく、視覚検査の能力を向上させるための演算能力を手に入れられるようになります」と述べた。

Moor Insights & Strategy 社社長兼主席アナリスト、パトリック ムーアヘッド (Patrick Moorhead) 氏
「AI チップが毎日のように発表されている世界において、NVIDIA は、Jetson Xavier NXによって限界を押し広げたと考えている。この製品は、小さなサイズと低電力の優れた性能とともに、パワフルで一貫性のあるソフトウェアアーキテクチャよって、組み込みエッジコンピューティングに求められているものを実現しています」
と述べた。

 NVIDIA は同日、データセンターおよびエッジでの AI 推論ワークロードの性能を測定する5つのベンチマークすべてにおいてトップとなったことを発表した。これは、AIトレーニングを測定する、最近のベンチマークのいずれにおいても、同社が強固な地位を築いていることに基づいている。業界初の独立系推論用AIベンチマークであるMLPerf Inference 0.5の結果は、データセンター向け NVIDIA Turing™ GPU およびエッジ向け NVIDIA Jetson Xavierシステム オン チップ (SoC) の推論能力の高さをはっきりと示している。Jetson Xavier NX モジュールでは、これらのベンチマークで使用された、Xavier SoCの新しい省電力バージョンが採用されている。

Jetson Xavier NX モジュール仕様
GPU384のNVIDIA CUDAコア、48のTensorコア、ならびに2つのNVDLAを搭載したNVIDIA Volta
CPU6コアCarmel Arm 64 ビット CPU、6MB L2 + 4MB L3
ビデオ2x 4K30のエンコードおよび 2x 4K60 のデコード
カメラ最大6台のCSIカメラ(仮想チャネルを通じては36台)、12レーン(3x4または6x2) のMIPI CSI-2
メモリ8GB 128-bit LPDDR4x、 51.2GB/秒
接続性ギガビット イーサネット
OS 対応Ubuntu ベース Linux
モジュールのサイズ70x45mm

 Jetson Xavier NXは Jetson ファミリーの新製品であり、他にはJetson Nano、Jetson AGX Xavier シリーズおよびJetson TX2 シリーズで構成されている。Jetson Xavier NX は、高速のCSIおよびPCIeから低速のI2CおよびGPIOに至る、多様なIOのセットを備えている。Jetson Xavier NX の多くの周辺機器およびセンサーとの互換性、ならびに小さなフォームファクターと優れた性能が、組み込みAIおよびインダストリアルIoTシステムに新たな機能をもたらすだろう。

 Jetson Xavier NXは、Jetson Nanoとのピン互換がある。ハードウェアデザインを共通化し、Jetson Nano実装のボードおよびシステムと共有することによって、Jetson Xavier NX にアップグレードすることも可能。さらにJetson Xavier NXは、TensorFlow やPyTorch、MxNet、Caffeなどの主要なAIフレームワークすべてに対応している。

 Jetson Xavier NX モジュールは、NVIDIAの流通チャネルを通して、エッジ システムの大量生産を行う企業向けに、3月に399ドルの価格で販売される。開発者は、Jetson Xavier NXをエミュレートするためのソフトウェア パッチを適用した Jetson AGX Xavier 開発者キットを使用することにより、 同日よりアプリケーション開発が可能。