2019年10月29日、東芝と東芝エネルギーシステムズ(以下、ESS)は、ドローンを活用したプラント施設や高所設備の効率的・高精度な点検技術を開発したことを発表した。プラント施設や高所設備の3Dイメージを精緻に構築し、ドローンの最適な飛行ルートの事前生成と画像認識技術を組み合わせることにより、劣化箇所の把握などの点検を効率的かつ高精度に行う。同技術により、作業員が簡単に立ち入れない所や、足場を組まなければいけない高所の点検作業を容易に行うことが可能となる。東芝およびESSは、今後国内で複数の実証試験を行うことで技術の完成度を高め、実用化を目指す。

 国内のプラント施設の多くは高度経済成長期に建設され、50年ほど経過して建物や配管等の劣化が進んでおり、保守点検の必要性が増している。一方で、作業員の高齢化や人手が不足する中での点検員の確保や、煙突や鉄塔など危険を伴う高所設備における作業員の安全確保と効率化が課題となっている。

 東芝グループは課題解決に向けて、プラント施設等の点検業務にドローンを活用することにより、安全性を確保しつつ省人化と効率化の両立を目指していく、としている。

ドローンを活用した点検ソリューション(東芝エネルギーシステムズ)

 同技術では、最初に東芝プラントシステムが保有する3Dレーザ計測技術を用いて、対象施設の形状を計測し、サイバー空間上に施設の形状を三次元に再現する。次に、東芝が保有する生産シミュレーション技術を活用し、施設を撮影するためのドローンの最適な飛行ルートをサイバー空間上で生成する。その後、この最適な飛行ルートに従ってドローンが自律飛行してフィジカル空間上で施設を撮影し、サイバー空間上に施設をより精緻に三次元で再構成する。ドローンが撮影した画像に、東芝が保有する画像解析技術を用いることで、錆などを検出し、劣化箇所を特定することができる。また、定期的に点検することで経時変化を把握することができ、将来の劣化予測につなげることも期待できる。

 東芝およびESSは、傘下のシグマパワー有明が運営する福岡県大牟田市の三川発電所のボイラー施設(一部休止中の設備を含む)にて同技術の実証実験を行い、プラント施設の3Dイメージの構築を含む一連の作業工程と、構造物の錆などが適切に検出できることを確認した。

 東芝およびESSは同技術を、11月7日、8日に東芝デジタルソリューションズがグランドニッコー東京 台場で開催する「OPEN INNOVATION FAIR 2019」に展示する予定である。今後展示会や個別の提案活動により、同技術の実証実験に興味を持つパートナー企業を募り、PoC(概念検証、Proof of Concept)を通して個別のニーズに合わせた付加機能の検証等を行うことで同技術の完成度を高め、実用化を目指す。

ドローンを活用した点検サービスの概要

▼東芝エネルギーシステムズ
https://www.toshiba-energy.com/index_j.htm