2019年9月6日、シンガポールのH3ダイナミクスは、水力発電やダム点検を行うブラジルのEPHエンジニアリングと提携したことを発表した。AI対応の損害評価機能と、一度に3.5時間の飛行が可能な燃料電池ドローンのハイコプターを組み合わせたターンキーのダム点検ソリューションを市場に投入することが目的である。

 ブラジルは、ダム安全計画に5,000基以上のダムが提出されているが、死者300人以上と重大事故を引き起こした最近の2件の崩落事故※1を受けて、ブラジル当局は同国における点検と維持の要件を強化した。

 EPHエンジニアリングのCarlos Eduardo Cavaco Gomes氏は、「多くの事故報告書によれば、従来の問題箇所は測定機器ではなく目視によって検出されていた。ドローンは助けになるが、これらインフラのサイズが大規模であるため、さらに長い飛行時間が必要である。」と述べた。

 一部のダムは非常に大きいため、その表面を完全にスキャンするには、何カ月分ものバッテリーを電源とするドローンの飛行が必要となる。新しいハイコプター型燃料電池ドローンは従来よりも6倍広い表面部分をスキャンできるので、大型ダムの点検がより迅速に完了する。

 またテキサス州オースティンで設計されたハイコプター型燃料電池ドローンは、新しいデータ取得ソフトウエアを搭載しており、先月、ブラジルのCOPELの水力発電ダム施設での試験で成功している。

 ハイコプターが収集したデータは、専門家による検証プロセスを迅速化するようデザインされた新たなAI補助点検プラットフォームのH3 Zoom.AIに送信される。様々な種類の欠陥が、H3ダイナミクスの機械学習エンジンによって報告可能となった。Gomes氏は「私たちはダムの外観検査におけるカバーエリア、俊敏性、拡張性、頻度、質を改善できるようになった」と語っている。

 H3ダイナミクスは既にEPHエンジニアリングのAIソリューションをシンガポールの高く複雑な高層ビル150棟に配備済である。材料と構造の類似性を前提にすれば、蓄積してきた知見はダムにも応用可能だ。

 さらにH3ダイナミクスは、災害時に救助を支援できるよう、高リスク施設へEPHエンジニアリングの緊急用DBXドローンステーション網を配備する計画である。DBXドローンステーションはこうした設備の多くが位置する遠隔のオフグリッド環境に配備できるようデザインされている。

※1 http://theconversation.com/dam-collapse-at-brazilian-mine-exposes-grave-safety-problems-110666