2019年9月9日、センシンロボティクスは、ベイシスとドローン点検サービスにおける業務提携を開始したことを発表した。

 同提携はベイシスが行う外壁点検・劣化診断において、センシンロボティクスが提供するドローン自動航行プラットフォーム「SENSYN FLIGHT CORE」を導入し、ドローンの自律航行による点検を行う、というものである。
 また、離発着・充電を全自動運用で行うドローンポート「SENSYN DRONE HUB」の設置・保守を含めた共同提供も行う。

 ドローンを活用することで、ゴンドラ若しくは足場を架設しなければ確認出来ない箇所でも、タイル1枚1枚の剥落も見逃さずに検出することが可能である。また、ドローンに搭載する赤外線カメラを使うことで、目視では発見が困難だった不具合を確認することができるようになる。

 さらに、「SENSYN FLIGHT CORE」を利用することで、ドローンの自動航行や、可視光・赤外線カメラを使った自動画像解析、点検結果レポートの自動作成が可能になる。

 自動航行により、作業者の見落とし・ミスの低減・点検の負担軽減を実現する。外壁点検の他、鉄塔や送電線等の点検業務も行う。

左:可視光カメラによる撮影/右:赤外線カメラによる撮影

 同提携の背景として、少子高齢化による労働人口減少で発生するインフラ従事者の担い手不足を解決するためにドローン・ICTを活用し、特に高所作業の安全かつ効率化を促進することで、国内のインフラの長寿命化の一翼を担いたいという両社の考えがあったという。外壁点検は通常、ゴンドラや足場を用いた専門の技術者による打音検査で行われている。しかしこの方法は、作業者の墜落による人身災害発生のリスクや高額の検査費用がかかるといった課題がある。

 同提携を通じて、『労働人口減少や、それに伴うインフラ点検作業の担い手不足といった、日本に差し迫った社会課題の解決に貢献する』という想いのもと、ドローンなどのロボティクス、RPA・AIといった最新のテクノロジーを活用し、我が国のインフラの長寿命化の実現に貢献していく、としている。

点検業務の少人化・コスト削減・作業効率化を実現

 従来型の点検・調査では、足場の組み立てや高所作業車の発注など、多くの人力・コストが必要であった。人力で行う点検作業の手間と時間を大幅に短縮することができ、約1/3程度に削減することが見込まれる。

<事例>
物件名:都内某高層マンション
階/戸数:30階 / 約500戸
築年数:13年
調査目的:大規模修繕工事前の劣化診断調査

ロープアクセスによる打診調査ゴンドラによる打診調査ドローンによる空撮調査
・費用:120万円~200万円
・日数:7日間(4名体制)
・費用:250万円~300万円
・日数:5日間(4名体制)
・費用:150万円~200万円
・日数:2日(3名体制*)
*操縦士・アシスタント・安全管理者

※ベイシス調べ

インフラ点検におけるドローン活用の必要性

 インプレス総合研究所『ドローンビジネス調査報告書 2019』によると、国内のドローンビジネス市場規模において、2018年度の日本国内のドローンビジネスの市場規模は931億円と推測され、2017年度の503億円から428億円増加している(前年比85%増)。2019年度には前年比56%増の1,450億円に拡大し、2024年度には5,073億円(2018年度の約5.4倍)に達すると見込まれる。

 最も成長が見込まれるインフラ点検分野は、2018年度は43億円だが、2024年度には年間1,473億円と想定されており、現在の13倍のマーケットになる見込みである(*1)。
 また、不動産経済研究所「超高層マンション市場動向 2019」によると、2019年以降に完成を予定している20階以上のいわゆる「超高層マンション」は、全国に300棟あり(*2)、1棟平均450万円で点検業務を受託すると13.5億円の売上規模になると見込まれる。

 背景には、日本において少子高齢化による労働人口減少が深刻化していることが挙げられる。国立社会保障・人口問題研究所『日本の将来推計人口(平成29年推計)』によると、65歳以上の高齢者の人口は2020年の3,619万人が2060年に3,540万人とほぼ横ばいなのに対し、生産年齢人口(15〜64歳)は2020年の7,406万人が2060年に4,793万人となり、40年間で約3分の1に相当する約2,600万人が減ると言われている。人口規模でみた日本の市場全体は4分の3に縮む上、そこにモノやサービス、社会保障を供給する国内の担い手はそれ以上のペースで3分の2まで縮小されると見込まれる(*3)。

 特にインフラ整備、メンテナンスの担い手は若手入職者の減少、高齢化が顕著である。55歳以上が約3割を占める一方、29歳以下の若手が約1割と、全産業に比べ、高齢化と若手の比率の低下が著しく進行している(*4)。

 こうしたデータから、インフラの点検という課題に対してドローン活用が有効であることが伺える。

*1 インプレス総合研究所『ドローンビジネス調査報告書 2019』
*2 株式会社不動産経済研究所『超高層マンション市場動向 2018』
*3 日本の将来推計人口(平成 29 年推計)| 国立社会保障・人口問題研究所
*4 国土交通白書 2016