2019年9月2日、自律制御システム研究所(以下 ACSL)は、JSR、およびアクセンチュアとの連携の下、ドローンとAI(人工知能)による画像認識技術を活用し、化学プラントなどのインフラ設備の腐食レベルをスクリーニングにより自動判定できるシステムを開発したことを発表した。同システムでは、ドローンで撮影した高精度な画像をディープラーニングなどの先端AI技術で判定することにより、従来型の現場での目視による点検に代わり、制御室のモニター上でより迅速、正確かつ安全な方法での設備点検が可能になる。

ACSLはNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)より「AIシステム共同開発支援事業」の助成を受け、2018年8月からJSR鹿島工場で実施してきた実証実験などを通じ、GPS電波の届かない環境(非GPS環境)下でも自律飛行する自社のドローンの開発と、空撮された画像データとシステム全体に連携する仕組みを整備した。また、アクセンチュアはAIやデータサイエンスの専門組織「アクセンチュア アプライド・インテリジェンス」が有する技術力や産業保安分野に関する豊富な知見を活用し、これらの画像やデータを解析し、腐食箇所の判定を可能にするAIの構築および統合アプリケーションプラットフォームの開発を担当した。

同システムにおいて、同社製のドローンは非GPS環境下で画像処理技術を用いて飛行し点検対象の画像を撮影、ドローンの着陸と同時に専用のクラウドに画像をアップロード、位置座標との突合を行う。さらに、取得された画像の腐食度合いを評価し、自動でモニターに表示された2D/3Dの地図上にマッピングする。また、評価画像とスプール図との紐づけや、点検日・飛行エリア・装置名などを入力・管理することも可能である。これにより、プラントの検査員はオンラインのプラットフォーム上で点検箇所の腐食評価が可能になるとともに、設備異常の早期検知および保全業務の高度化を実現することができる。

同社は今後、化学プラントや電力・ガスのインフラ設備の現場などで同システムの導入を促進し、日本の保安業務の高度化を図る。また、引き続きシステム全体の完成度を上げることで、将来的な点検・保全業務の完全無人化を目指す、としている。