米国テキストロン社(NYSE:TXT)傘下のベル(CEO Mitch Snyder 以下、ベル)とヤマトホールディングス(以下、YHD)は、2018年10月12日に両社で発表をした合意内容を基に、2020 年代前半のサービス開始に向けた取り組みの第一段として、2019年8月26日に米国テキサス州フォートワース郊外において、ベルが開発したAPT 70(Autonomous Pod Transport 70:自律運航型ポッド輸送機)と YHD が開発した貨物ユニット PUPA(Pod Unit for Parcel Air-transportation:荷物空輸ポッドユニット 以下:PUPA)の機能実証実験に成功したことを発表した。

背景および実験概要

 近年の無人航空機に関する技術の飛躍的な進歩の中で、ベルと YHD はユーザーに対して新たな価値を提供するため、両社がこれまで培ってきたノウハウを融合させた空の新たな輸送モードの構築を進めている。そして、その実現により大型・中型 eVTOL 機(Electric Vertical Take-Off and Landing:電動垂直離着陸機)を活用した物流領域においてグローバルリーダーとなることを目指している。今回、両社は改めてサービス導入の予定を 2020 年代前半に設定し、それに向けた取り組みの第一弾として、それぞれ開発した eVTOL システム構成要素の連接性に関する機能実証実験を実施した。

 実証実験は現地時間の 2019年8月26日朝に実施され、ベルの社長兼最高経営責任者の Mitch Snyder氏と YHD の代表取締役社長の長尾裕氏を含む約50名がこの実証実験に参加した。実証実験では、両社で開発した技術を連携し、以下の項目が検証及び証明された。

 ①APT 70 の空力特性を最適化した姿勢での自律飛行
 ②飛行中および地上での作業時の高い安全性と可用性
 ③空輸からラストワンマイルへのシームレスな輸送形態の遷移
 ④荷物の格納および取り出しに関する取り扱いの容易さ

 また、この成功を踏まえ、ベルと YHD は 2020 年代前半までに APT 70 が YHD の荷物輸送システムで導入され、前例の無いオンデマンド物流サービスの顧客満足体験を創りあげることを目指している。

 ベルの社長兼最高経営責任者 Mitch Snyder氏は、「我々のチームは民間物流に対する市場のアプローチを変える可能性を秘めた革新的なソリューションを開発してきました。両社でテクノロジーを更に洗練し、この物流エコシステムの中で安全に運航できる効率的で機敏な機体を生産してまいります。」と述べている。

 YHD の代表取締役社長の長尾裕氏は、「ヤマトグループは、これまでの100年間もそうであったように、物流イノベーションの創出を通じて、さらなるお客様の利便性を追求し、豊かな社会の実現に貢献してまいります。今回の取り組みのような革新的な技術の実用化のためには、まず物流現場における実用性の高い機能設計が不可欠であり、今回の実験成功によって、新たな空の輸送サービスを構築するための大きな第一歩を踏み出すことができたと実感しています。今後、2020 年代前半のサービス開始に向けて、eVTOL システムの技術開発とサービス設計をますます加速してまいります。」と述べている。

同実験に使用した機体

ベル APT70

 ベルのAPT 70は、テイルシッター型の電動垂直離着陸機に革新的なペイロードポッドを搭載する。この電動垂直離着陸機は時速100マイル(時速160km)以上の速度で飛行し、70ポンド(32kg)の積載量になります。APTの能力によって完全に別次元の輸送サービスやオペレーション効率の向上が実現できる。

 PUPA70XGは、APT70などの貨物eVTOL機に結合して荷物を空輸することのできる貨物ユニットで、70ポンド(32kg)までの積載可能重量を持つ試験機である。この機体は、巡航中には高い空力特性を持つ一方、地上では様々な環境下において荷積み・荷下ろしや搬送を容易に行うことができる。PUPAシリーズは、人間中心設計思想に基づき、ヤマトグループの100年分の物流ノウハウを活かした、未来の貨物ユニットである。