2019年7月16日、高松コンストラクショングループの高松建設及び青木あすなろ建設は、非破壊検査と3社共同で、建築構造物壁面の点検技術向上を目的とした「壁面走行ロボットによる外壁点検システム」を開発したことを発表した。

タイル落下による事故の防止に、外壁の検査が義務付けられている

 近年、外壁の経年劣化等により外装タイルの剥落事故が懸念されている。その為、2008年に改正された建築基準法においては、ビル等の特殊建築物の所有者・管理者に外壁の検査を実施することが義務づけられている。一般的な外壁の検査方法は、壁面全面を打診し、その音の異常の有無を技術者が聞いて診断している。しかし、建物に足場の架設や、ゴンドラやロープで上から技術者を吊って実施する必要があり、建築主にとってコストや工期などの負担が大きく、また検査結果も検査員の技量や経験に大きく影響されることから、ロボット等の活用による検査方法の効率化と診断精度の向上が求められている。

 今回共同開発した外壁点検システムは、ロボットが壁面を自走して壁面を打診し、診断結果をデータ化し分析・蓄積する事でより高精度な診断が期待出来る。老朽化建物が増加している昨今において、より多くの外装タイルの剥離による事故を防ぐため、技術開発を通して社会に貢献する、としている。

打診測定機やカメラを搭載し、壁面を走行する診断ロボットを開発

 壁面走行ロボットは、中心部に空気を吸引するための「バキュームチャンバー」を配置し、それを取り囲むようにローラーがあり、壁面を吸着しながらローラーの回転により壁面を走する。

 このロボットに打診測定機やカメラを搭載し、建物外壁面の打診とカメラ撮影によりタイル剥離やクラック等の検査を行う。そして正確な劣化位置をデータ化し、パソコンで外壁面の劣化状況を図示化する。また、計測データは経年変化の累積情報として蓄積し改修履歴とともに保存、将来の建物の維持管理計画に活用できる。

同システムの特徴

 今回開発した外壁点検システムは、長さ610mm、幅533mm、高さ440mm、重量30kg程度と比較的小型で、また壁面走行ロボットの設置や操作方法も簡便なため、比較的規模の小さい建物や隣地境界と空きの少ない建物の検査に適したシステムである。2019年8月より3社共同で実際の建物で運用を開始する。

「壁面走行ロボットによる外壁点検システム」の基本仕様
・壁面の材質にかかわらず走行が可能
・最大速度64mm/秒で、19mm程度の段差乗り越えや、緩やかな曲面部でも走行可能
・打診システムによりタイルの浮き、剥離を検出可能
・カメラユニットによりタイルの割れや目地の状態等の確認が可能
・自己位置推定ユニット等の位置評定システムにより、外壁調査箇所の図示化が可能

技術研究所について

 高松コンストラクショングループが所有する技術研究所は、『筑波研究学園都市』にあり、筑波大学に隣接する自然豊かな環境に立地している。

 同グループの研究開発は建築や土木を中核とするほか、環境対応、防災技術などといった建設分野全般を担うことで、より広いニーズに応えている。また、社外からの受託実験や受託研究などへの対応も行っている。

高松コンストラクショングループ技術研究所