2019年6月26日、アイ・ロボティクスは、リックス、一般社団法人日本ドローンレース協会(以下JDRA)、およびマイクロ・ドローンによる撮影で著名な増田勝彦氏(エウレカ)と共同して、狭隘部(きょうあいぶ)に直径8~19cm、重量170g以下のドローンを送り込み撮影を行うソリューション・サービスを開発したことを発表した。このサービスの実現により、煙突、管路、トンネル内等の狭隘部や発電所ボイラー等の「人が立ち入ることのできないエリア」の点検を容易に行うことが可能となる。

 このソリューションに使用されるドローンはレースやホビー用に開発された小型で安全な機体等を改造。 ヘッドマウントディスプレーなどを介して操縦者が自ら飛行する感覚で撮影と点検を行うことができる。

 また、アイ・ロボティクスではJDRA及び増田氏と協力して、独自に技能研修プログラムも開発。この技能研修プログラムを受講の上「実運用検定試験」に合格し、別途「業務用無線資格」を取得することで、各種規制に準拠したサービスをドローン運用事業者でも開始できる。

狭隘部イメージ

狭隘部におけるマイクロ・ドローンの有効性

 あらゆる建築物は、建築基準法などの法令に基づき適切に管理・修繕され、安全性を維持する必要がある。なかでも、特殊建築物と呼ばれる、高層建築、商業施設、学校、病院、倉庫、プラント等は、定期的にチェックと修繕が行われる必要があり、安全性や耐久性、資産価値とも直結する最重要事項である。しかしながら、煙突や管路、トンネルといった狭隘部の検査は容易ではなく、また、多くのプラントやインフラは老朽化が進行しており、人によらない自動化・遠隔化ソリューションの実現は喫緊の課題とされてきた。

 今回発表された、同社が展開するマイクロ・ドローンによる狭隘部ドローン点検サービスは煙突や管路、トンネルといった狭隘部に直径8~19cm、重量70~170g程度の特殊なドローンを送り込み、遠隔操作によりこれを操作することで、人命を危険にさらすことなく、効率的かつ効果的な点検・撮影を行うことができる。このドローンは1機あたりの価格が安価であり、常に複数機を運用し機動的な対応を低コストにできるため、非常に現実的なソリューションとなっている。

 また、汎用の通信技術を利用し、遠隔操作により効率的な運用ができることから、発電用ボイラーや化学プラントの反応炉などの人が入ることができない特殊環境下でも運用が可能である。同社ではプラント内部での検査技術をひきつづき開発し、高度なサービス提供や技能研修までを一貫して行うことで、グローバル規模における更なるエネルギーの安定供給、経済発展ならびに環境負荷の低減にも貢献していく、と述べている。

サービスの特徴

 同社の狭隘部ドローン点検サービスは、より現実的なソリューションを目指して開発された。顧客の従来の工法や作業上の課題を把握した上で、同サービスを組み合わせて活用することで、シナジー効果が見込める。例えば、従来は人が危険を冒して直接点検している場所を事前にマイクロ・ドローンを用いて安全性を確認したり、内部状況を確認して精密点検すべき場所の当たりをつけられるため、安全性向上と、確実な工期短縮・コスト低減が可能となる。

顧客のメリット(プラント事業者、 施設管理者など)

 ・経験豊かなスタッフが既存の作業方法を十分に検討したうえで、ドローンによるソリューション提供が可能な対象(作業/場所)を特定。それにより、従来工法の人による技量とマイクロドローンの機動力を相互に活かした、よりスマートで効果的な作業を効率的に実施することが可能。

 ・経験豊かなスタッフが構造物の状況などを十分に検討したうえで、最適なドローン・システム、通信方式などを決定する。ドローンのサイズは8~19cm程度、搭載するカメラやセンサーなどによって重量は変化するが、170g以下であり運用にあたっての飛行申請が不要。(※運用にあたっては別途業務用無線資格の取得が必須)

 ・遠隔操作なので、発電ボイラー等の人が入れない特殊な環境でも安心して利用することができる。また、安価で小さいため、例えば炉内点検などの場合、緊急時などには"片道運用"として、そのまま超高温で熱分解させるなどの対応も考えられる。

 ・顧客によるドローン・ロボットの資産化やメンテナンスが不要なサービスとして提供。

ドローン運用事業者のメリット

 ・業務用無線資格以外に特別な資格などが必要なく、 技能研修・フォローアップ研修も含むコンサルティングサービスも併せて提供するので、 この技能研修プログラムを受講の上「実運用検定試験」に合格し、 別途「業務用無線資格」を取得することで、 運用事業化が可能。

 アイ・ロボティクスでは、 引き続き各社との共同研究を継続し、 日本の産業競争力を強化するべく、 安全・確実なサービス提供を目指して開発をしていく、と今後の展望を明らかにした。

サービスの展開可能場所

 狭隘部全般に利用可能。
 例:煙突内、 管路内、 窯炉、 トラフ、 排気ダクト、 パイプライン、 洞道、 マンホール内、 発電用ボイラー、 化学プラントの反応炉、 トンネル、 地下構造体、 船内、 クレーンガーダー、 ホッパー等

マイクロ・ドローンによるデモンストレーション

 アイ・ロボティクスによる、マイクロ・ドローンを利用したデモンストレーションの開催予定。

東京開催

 日時:7月29日 13時~16時
 場所: LIFORK Lab(東京都千代田区大手町二丁目3番2号 大手町プレイス ウェストタワー地下2階)
 ※参加希望者はアイ・ロボティクスまで連絡。

大阪・名古屋・福岡開催

 未定:8月以降を予定 ※詳細は決定次第、 HPにて順次発表。

オンナノコズ:"Onnanocos" × Micro Drone

今後の展開

 アイ・ロボティクスは狭隘部ドローン点検サービスに対しオペレーションコンサルティング、統合データ解析プラットフォーム、運用解析、人材プラットフォームを提供し、提携各社と共にプラント向けの統合ドローン・ソリューションの一部として展開していくという。

 そのため、今後の展開を見据えて、エン・ジャパン、マネックスベンチャーズ、三菱UFJキャピタル、ドローン・ファンドからの第三者割当増資による資金調達を行った。アイ・ロボティクスは、ハードウェアのみならずソフトウェア分野への投資を積極的に進めている。ドローン・ロボットによる高所外壁作業の自動化・省力化を進めると同時に、データ解析の人工知能化をさらに進めていく、との展望を示した。