2019年6月25日、會澤高圧コンクリートは、米マサチューセッツ工科大学(MIT)発の航空宇宙ベンチャーであるトップフライトテクノロジーズ(TFT)と戦略的に提携し、TFTが特許を持つハイブリッド電力システムを搭載した長距離・大容量の産業用ドローン(UAV)を共同で開発、コンクリート系インフラを中心に監視や維持補修等のサービス事業を幅広く展開することを発表した。

導入機体CG

 同社は、対応が迫られているインフラのメンテナンス事業を推進して行くキーテクノロジーとして、バクテリアの代謝機能を活用することによってコンクリートのひび割れを自然に修復する「自己治癒マテリアル」の実用化を進めている。自己治癒性能を持つ液体タイプの補修材を遠隔地のコンクリート構造物の表面にドローンで自動的に塗布する目視外ロボット施工法の早期確立を目指しており、ペイロード(最大積載量)が最低でも10kg以上、航続時間が1時間を超える本格的な産業用機体を模索していた。

今回の提携について、會澤高圧コンクリートの會澤社長は「大ペイロードと長期間飛行を実現するTFTの技術は現状、唯一無二の存在だ。当社の自己治癒マテリアルのドローン施工へ道を拓くことになる」とその意義を強調。一方、TFTのロン・ファンCEOは、「それぞれの専門分野について深い知識を持つ両社が、世界が必要とするニーズに対処する新しいソリューションを共に生み出そうとする素晴らしい取り組みになる」と話している。

TFTは、航空宇宙工学の研究者だったロン・ファン博士らMITの卒業生が中心となり2014年に設立。混合ガソリンを燃料とするエンジンで発電しながら軽量バッテリーに蓄電して電力を供給するハイブリッド電力システムを搭載した独自機体「Airborg(R)」の設計を特徴としている。

 現行のドローンの飛行時間は最長でも15分程度と短く、バッテリーの交換が煩雑であるのに対し、TFTは一回の給油で長時間の飛行が可能であり、運行管理の手間を大幅に削減することができる。さらに安定飛行の妨げとなるエンジンからの振動を抑制する機能や、優れたセンシング技術で、悪天候でも安定した飛行を実現する。

 両社は第一弾として、燃料やセンサー類を除き、最大10kgの積荷を抱えて最長1時間の継続運航が可能な新型機2機を今夏を目途に開発する。

機体には、
1.レーザー照射の点群データを元に地形図や構造物の3D画像を作成する高性能ライダー(LIDAR)
2.高解像度(4K)電子光学カメラ
3.コンクリート表面の浮きや剥離を解析するのに使うサーマルイメージングカメラ(サーモグラフィー)
4.コンピュータユニット等
を搭載する予定。これらの搭載装備だけで8~10kg、機体の総重量は33kgに達する見通しである。

 これにより、地上のデータをドローンから収集・統合・蓄積・更新して顧客に付加価値の高い情報を提供し続ける「地理情報システム」(GIS)サービスを展開できるようになる。コンクリート系インフラの点検はもちろん、大規模農地の育成状況をモニタリングしながら農薬を散布したり、長大な送電線網を目視外で自動監視するなど、様々な用途に活用できるとみている。

導入機体 飛行時

 両社は、機体の販売も同時に進めながら国内の顧客基盤をつくり、年末を目途に新会社などビジネスユニットの在り方について最終決定する。この間、他のテクノロジーベンチャーとの提携も積極的に進める考えで、機体の運行や保守点検については、国内ドローン業界の老舗で、すでに全国28カ所に認定教習所を組織しているTEADと提携する。

 TFTは、機体の設計製造のみならず、AIを使った独自の機体制御システムや複数の機体を同時に操作する運行管理システムなどソフトウェア開発にも優れ、同社との提携を足掛かりに本格的な日本進出を果たす考えだという。會澤社長は、「Airborgを活用した地理情報システム(GIS)のビジネス手法をまずはしっかりと確立しつつ、年明けからの第二フェーズで目視外飛行による自己治癒材のロボット施工を実用化したい」と話している。