2019年6月12日。ドローンやロボットで、世界に貢献するグローバルカンパニーを目指すブルーイノベーション株式会社(本社:東京都、代表取締役社長:熊田貴之)は、自社開発の屋内自動飛行技術を活かし、自由にソリューションを選べ、斬新なデザインで簡単にセッティング可能な、これまでとは違う、新たなドローン屋内フライトシステム「AMY」を発表した。

機体を手にする熊田社長(左)と熊田専務(右)

独自の自己位置推定技術で屋内の非GPS空間で自動飛行

 ブルーイノベーション株式会社では、複数のドローンを協調し連携させて、複雑なミッションを達成する統合管理プラットフォームのBlue Earth Platform(BEP)を開発してきた。このBEPを活用して、施設内の警備や屋内点検に教育や安全、そしてエンターテイメントと物流という5つのサービスを展開してきた。

 中でも、屋内における非GPS環境下の空間で自動飛行を可能にする独自の自己位置推定技術は、下水管や地下トンネル内の点検作業に、オフィス残業監視サービスなどのサービス提供へと応用されてきた。その屋内自動飛行技術を活かして、自由にソリューションを選択し、斬新なデザインで簡単にセッティングできる新たなドローン屋内フライトシステムを開発した。

 発表会に登壇した代表取締役社長の熊田貴之氏は、「ブルーイノベーションに依頼された数々の屋内業務の課題を解決するためには、新たなプラットフォームが必要になると考えて、インドアフライトプラットフォームを開発しました」と説明する。

 熊田氏によれば、オフィス警備や下水道点検などでインドアフライトの実績を示してきたことで、多くの企業からドローンを活用した点検や警備の可能性について相談されているという。例えば、倉庫内の棚卸しに工数がかかっていたり、床面積の広い商業施設の警備や、工場設備の点検員を危険に晒さないようにするなど、屋内で定期的に飛行して点検や警備を遂行できるドローンの需要が増えている。

 こうした課題に対して、ひとつひとつオーダーメイドで対応していくと、開発コストも時間もかかる。そこで、ブルーイノベーションでは、ドローンの機体と飛行制御を指示するアプリケーションに、データを保管するサーバーをセットにしたソリューション構築の基盤を開発した。それが、インドアフライトプラットフォーム「AMY」になる。

「AMY」を構成する3つの要素

「AMY」開発でこだわり抜いた5つのポイント

 続いて登壇したブルーイノベーションの専務取締役の熊田雅之氏は、「インドアフライトプラットフォームの開発においては、高精度化と軽量化に安価な導入、わかりやすいUI(ユーザーインターフェース)、そして親近感のわくデザインを追求しました」と5つのこだわりのポイントを説明する。

 高精度化とは、屋内での自己位置を推定する精度を±1cmにする精密な飛行制御。離着陸でも±5cm以下という精密な屋内飛行を実現した。また、屋内での飛行でドローン特有の威圧感を出さないようにするために、910g(カバー取付時は約1.25kg)という軽量化も実現している。そして、コストを抑えるために、自己位置を制御する方法として、天井や床に貼ったマーカーを認識する技術を採用した。

 高価なドローンでは、ビジョンセンサーやLiDARなどの高精度な測定機器を搭載し、リアルタイムで自己位置の補正計算を行う。しかし、この方法ではドローンの開発コストが高価になる。そこで、ブルーイノベーションでは機体の上下にカメラを取り付けて、天井か床に貼った専用マーカーを認識して、安価ながら高精度な自律飛行を実現した。

 その結果、ドローンの機体も含めた初期の投資コストは、約100万円からという低価格になっている。さらに、実際の運用シーンを想定して、システム開発やドローンの操縦に精通していないユーザーでも、簡単に飛行経路を設定できるように、ゲーム画面のようなわかりやすいアプリケーションを開発した。こだわりの最後のポイントとなる機体デザインについては、丸みのあるプロペラガードやカバーを設計して、友達やペットのような親近感のあるドローンを目指した。ちなみに、カバーの色やロゴのシールなどは、オリジナルのデザインにも対応する。

ゲーム感覚で操作できるアプリの画面を説明する熊田専務

安定した屋内飛行を実演するデモフライト

 熊田社長と専務のプレゼンテーションが終了すると、会場の横に用意された屋内スペースで、デモフライトが行われた。熊田専務が、タブレットから飛行経路と時間をセットすると、床に置かれたドローンが定刻に離陸して、決められたフライトコースを正確に飛行した。専用アプリによる飛行経路の設定では、コースと機体の向きを指定できる。

 そのため、機体の進行方向だけではなく、左右や後方などにカメラを向けた飛行も可能になる。飛行中の映像は、機体の位置情報と一緒にリアルタイムでサーバーに転送される。サーバーに記録されたフライトログは、飛行時の映像と位置情報を同時に参照できるので、点検や警備で気になる映像が発見されたら、それがどの場所か容易に特定できる。また、フライトログがサーバーに保存されるので、ネットワークを介して離れた場所からでも、記録された映像を確認できる。

 発表会で披露されたドローンの仕様は、機体が910gでバッテリが450gの重量になる。フレームのサイズは、450 X 430 X 600 mm。推奨される飛行速度は0.3m/秒で、飛行時間は10分になる。屋内で飛行できる範囲は、飛行幅が1.5m以上で高さが2.5m以上となる。

 また、安全性とバッテリ消費を抑えるために、ドローンは飛行を終えると自動的に主電源をオフにする。ただし、プログラムによる定時飛行のために、最小限の待機電源は維持される。ちなみに、ドローンを制御するアプリケーションは、Androne 7.0以上のOSに対応し、将来的にはドローンのバッテリ残量などもモニタリングできるように更新する計画もある。

 デモフライト後のインタビューでは、すでに数社からの開発案件が動いていると熊田専務は話す。ひとつは倉庫関連の企業で、もう一社は屋内の動物を定期的に監視する目的で、インドアフライトプラットフォームの導入を検討しているという。具体的な社名や構築するシステムの詳細までは公表されなかったが、高精度でのインドア自律飛行を活用したソリューション開発を前向きに検討している企業は多いという。

屋内で高精度な飛行を実現する「AMY」ドローン
カバーを外したフレームだけの状態
天井に貼られた位置認識のための専用マーカー