2019年5月13日、Doogおよび子会社のDoog International Pte. Ltd.(シンガポール)は、モビリティロボットの事業化を開始することを発表した。一人乗りの「ガルー」および二人乗りの「モビリス」がそれぞれ現場での運用をスタートするほか、 様々な現場・ニーズへの展開が可能な新たなベースユニットの開発にも着手する、としている。

 同社はこれまで、 搬送ロボットの「サウザー」および大型機の「サウザージャイアント」を主力商品として事業を展開してきた。サウザーは、優れた追従性能や操作がシンプルで誰にでも使いやすい点などが評価され、工場や倉庫などを中心に国内外多くの導入実績がある。同社では、これらの技術開発を応用したモビリティロボットについても製品化を進めてきた。

 以下、モビリティロボットの事業化に関して説明する。

事例1:1人乗りモビリティ「ガルー」

 2019年度の上半期中に1人乗りの空港向けパッケージ製品「ガルー」がシンガポール子会社であるDoog International Pte. Ltd.から製品化される予定。ガルーは乗客が1名ずつ乗車して3台を同時運行し、追従走行によって搭乗ゲートや入国審査への移動などに活用する。スタッフが所持するスマートフォンから簡単に操作でき、未来的なデザインであることが特長である。既に業務での本格運行について数十台規模で採用を決定した顧客への出荷がまもなく開始され、国内外の複数の空港関係事業者から問い合わせがあり、現場導入・実証が進む見込みである。また、ガルーは同社の搬送ロボットとシステム基盤が共通であるため、産業現場や小規模施設における展開として搬送ロボット同様のスマートフォンを用いないスタンドアロンでシンプルなUIによる運用も検討していく、としている。

2人乗りモビリティ「モビリス」

事例2:2人乗りモビリティ「モビリス」

 モビリスは、“あらゆる状況の人々が行楽を満喫するための乗り物”をコンセプトに開発された2人乗りのモビリティロボットである。2人が横に並んで乗車できるベンチタイプのシートでありながら、コンパクトで小回りがきく乗り回しのしやすさが特徴。

 2019年3月23日に富士急ハイランドにオープンした新アトラクション「無限廃坑」では、モビリス(ver2)をベースユニットに使用してトロッコの装飾を施したロボットライドが運用されている。単独自走式モビリティロボットが営業運行する国内初の事例であり、床に貼ったマーカーを読み取ることで加減速・停止・発進・後進・回転等様々な動きを実現できることや、コース変更は床の反射テープを貼りかえるだけで簡単に行えることなどにより、インテグレーションを含めたトータルコストの低さも事業展開における特長である。

2人乗りモビリティ「モビリス」

今後の展開:新たなベースユニットの開発

 同社のモビリティロボットはアトラクションの他にも、トレインなどで運行される観光周遊ライドや、ゴルフカートなどで運行される移動補助サービスなどのシーンでも自動走行・省人化により進化した運用形態を実現することができる。モビリティロボットの今後の展開のため、同社では新しいベースユニットの開発も行う計画である。

新しいベースユニットの構想

・車体幅は1m強
・車体長は1.2m~1.8m程度
・車体長を設計変更パラメータとして、2名~4名乗りなどの複数の乗車形態を実現
・高さ25cmほどのフラットプレートを持つ
・歩行者環境に溶け込んで時速1~5kmでゆったりと走行する
・運行環境に応じて、自動追従走行、無人ライン走行、環境形状地図走行、GPS走行を組み合わせるなどして様々な環境での運用に対応

新しいベースユニットの構想

 同社における”ベースユニット”とは、そのまま現場で使える完成品ではなく、”適切な現場インテグレーションによって各現場に合わせた形態となったものを販売する製品”を意味する。インテグレーションとは、オプション品や個別のカスタマイズを実施した機器の仕様の策定、および現場の運用についてリスクアセスメントの実施や敷設などの仕様の策定、さらに顧客が自身の責任の下で安全な運用を実現できるように導入説明を行うことなどを指す。 例えば、図中水色の座席・手すり・屋根等の装飾や、運行に合わせた電池をパートナー事業者が案件毎に最適に構築することでベースユニットは各顧客にとってニーズを満たす適切なものになる。

 同社では、これらのインテグレーションが新たなロボット機器を導入する顧客の要望を適切に叶える重要な高付加価値な業務であると位置づけ、適切なインテグレーションを実施可能なパートナー事業者との連携によって様々な業界や顧客に対する販売活動を推進していく、としている。

 同社はサウザーおよびサウザージャイアントの販売においても、従来から複数のパートナー事業者と連携した展開をしてきた。コア機能の開発とベースユニットの提供を同社が担い、現場インテグレーション業務や、ベースユニットに対してオプション機器を設計製造業務、現場での組み立て・敷設・納品といったサービス業務については各業務に精通した最適なパートナー事業者が1社または複数社で連携することで、様々な現場のユーザーに製品を採用してもらえる体制を築いている。

 同社は今後もベースユニットメーカ/部品メーカとして幅広くパートナー事業者と連携し、搬送ロボットおよびモビリティロボットの現場導入を進めていく、との展望を示した。