2020年2月27日、岩手県、ゼンリン、楽天は、岩泉ホールディングス、岩泉町の協力のもと、岩手県内で初となる、目視外補助者なしでのドローン自動飛行の実証実験に成功したことを発表した。岩手県、ゼンリン、楽天は、岩手県公募事業「いわてドローン物流実証実験委託業務」を通して、岩手県の地域課題を抽出し、ドローン物流の社会実装を目指す、としている。

プロジェクトの背景

 近年、ドローンに関する技術進展は加速しており、「空の産業革命に向けたロードマップ2019」によると、「空の産業革命」の実現に向けて、2018年に無人地帯での目視外飛行(レベル3)、2022年度以降、有人地帯での目視外飛行(レベル4)によるドローン利活用を本格化することが目標とされている。今回、実証実験を行った岩手県下閉伊郡岩泉町は、食料品等の買い物が困難な高齢者の割合※1が県内で最も高く、40%を超えている状況だ。また同町は、2016年の台風10号の影響で甚大な被害を受け、孤立集落が発生した地域でもある。上記を踏まえ、岩手県は買い物困難者等の課題解決に向けてドローンを活用した提案公募を実施し、ゼンリンの提案を採択した。同事業では、岩手県、ゼンリン、楽天、岩泉ホールディングス、岩泉町が協働し、買い物困難者の支援や災害対応など緊急時の活用も見据えて、携帯電話通信網を用いた目視外補助者なし飛行(レベル3)によるドローン物流の実証実験を実施した。この実証実験を通じて、ゼンリンと楽天は、岩手県における日常の買い物困難者や、物流業界の労働者不足などの課題の解消に加え、新たな配送手段として期待されるドローンを活用した物流サービスの実現を目指す、との方針を示した。
※1:食料品アクセス困難人口割合(2015年の値・農林水産政策研究所調査)

取り組み概要

 今回の実証実験では、各社連携のもと、約5㎞の距離で地元特産の食料品等を配送した。
【各社の役割】
(1)委託事業運営・統括、ドローン飛行ログ検証システムの開発、障害物の位置情報を踏まえた飛行ルートの設計(ゼンリン)
(2)ドローン機体の開発、飛行オペレーションの実施(楽天)
(3)実証実験フィールド・輸送物資の提供(岩泉町、岩泉ホールディングス)

道の駅いわいずみの担当者からスタッフが荷物を受け取る様子
スタッフが荷物をドローンに積み込む様子

今後の展開

 ドローン物流の社会実装には持続的な商業サービスとして成り立つことが重要である。また、受発注の仕組みや運用体制も含め、総合的なシステム構築も必要だ。岩手県では、ドローン物流に関する動向把握、調査・研究、社会実装に向けた手法の検討を行うため、県内市町村や商工・運輸・ドローン関係団体、大学、通信事業者の参画のもと、2019年7月に「いわてドローン物流研究会」を設立した。今後、同研究会において本実証の結果や課題を共有し、諸課題の解決に向けて検討を行うとともに、段階的な実証を進め、関係者が一丸となって社会実装に向けた取組を加速していく、とのこと。さらに、持続可能な開発目標(SDGs)の達成を目指し、より暮らしやすい社会を実現していく、と展望を示した。