2019年3月15日、一般社団法人日本 UAS 産業振興協議会(以下 JUIDA)、一般 社団法人日本産業用無人航空機工業会(以下 JUAV)及び一般財団法人総 合研究奨励会日本無人機運行管理コンソーシアム(以下 JUTM)は、目視外飛行の安全運航を実現するための教育・機体・運航管理の各評価基準を発表した。

 今回発表した評価基準では、目視外飛行における安全を確保する上で必要不可欠な要素・条件が包括的に取り纏められた。なお、同基準を作成するにあたっては、昨年 7 月に開所した福島ロボットテストフィールド(以下 RTF)にて3団体合同の大規模な実証実験を行った。

背景

 昨今、無人航空機は撮影や農薬散布、インフラ点検などの分野で利用が広がっており、新たな産業・サービスの創出や国民生活の利便や質の向上に資することが期待されている。
 その中でも特に物流分野での活用については、 2015 年に首相から 3 年以内の物流における無人航空機を可能にするという発言もあり、その社会実装に向けて官民共同で取組を進めている。昨年 9 月には、無人航空機の物流利用にとって不可欠な目視外飛行のルール改正が行われた。

 一方、民間では、この新しいルールに基づき、業界3団体が連携して新しい評価基準策定を行うこととなった。「操縦者教育」「機体」「運航管理体制」といった観点において気を付けるべき点を纏めていく。 なお、目視外飛行の実証実験に適したフィールドとして、福島県の協力の下、RTF を主要な検証場所として活用していく。RTFにて、 本基準策定における基準の妥当性を検証する為、実証実験を行っていく。

評価基準の概要

 今回作成した評価基準の概念図は下図の通り。

 また、各団体が作成した評価基準の詳細は次の通り。

1)運用者人材の教育に係る評価基準(JUIDA作成)

① 目的
 目視外飛行を実施するにあたって、機体の運用者(操縦者・安全運航管理者)に求められる要素・条件を明確にする。

② 概要
 JUIDAが従来から行っている教育プログラムである「JUIDA操縦技能士証明証」「JUIDA安全運航管 理者証明証」の取得者向けに、更に高度な資格証明として、目視外飛行が可能な技術・知識についての資格証明を検討した。飛行前から飛行後に至るまで、運用者が気を付けるべき観点を網羅的に記載し、従来の目視内飛行での運用を上回るリスクレベルの運用者が持つべき要素・条件を取り纏めた。とりわけ、以下の4点を重視し、基準を作成した。
a. 目視をしない状態で危険な状況であることを認識できるか
b. 危険な状況を認識した際に、適切に対応できているか
c. トラブル対応時のプロセスが適切であるか
d. 運用中のコミュニケーションは適切か

③ 将来展望
 来る目視外飛行による運用が主流となる時代を見据え、目視外飛行を行う運用者としての適性度を評価する人材育成カリキュラムを作成し、新たな資格制度を検討する予定。

2)機体に係る評価基準(JUAV作成)

①目的
 評価基準概念図 目視外飛行に対応した無人機の安全基準について、RTF を利用した評価の考え方の整理・検証、及び安全基準への反映を行うための検証飛行の在り方について検討する。

②概要
  RTFにおける目視外飛行のための機体の評価基準の検討については、JUAVが定める安全基準に基づいて認定を行うために、飛行時の運用に関わる下記諸要件について評価基準を作成し検証を行った。

a. 飛行計画作成と飛行可否判断の実施
b. JUAV が認定した産業用無人航空機による実目視外飛行の実施と定点滞空性能の模擬評価
c. 通信途絶に係る異常発生時の対処
d. 目視外地点からの帰投、もしくは異常発生後の適正な回収

③将来展望
 検証飛行結果を参考として目視外飛行に係る安全基準策定の検討を行っていく。

3)運航管理に係る評価基準(JUTM作成)

①目的
 福島 RTF において、その機能等を活用して目視外補助者無し飛行を行うためのガイドラインの策定 (目視外補助者無し飛行を行うための福島 RTF の機能等の評価)。

②概要
 福島 RTF で補助者を必要としない目視外飛行を実現するため、福島 RTF 及び当該施設に整備された運航管理システムなどの設備を活用し、福島RTFにおける「目視外飛行ガイドライン」を策定した。福島 RTFの設備機能および試験場の運用によって国土交通省の補助者なし目視外飛行の要件を満足できるか評価する。(RTF の設備が補助者の役割を代替することができるか検討する。)

③将来展望
 今回の評価結果を RTF へフィードバックし、補助者なし目視外飛行実験ができる試験場の実現へつないでいく。