2018年9月13日、モバイルコンピューティング推進コンソーシアム(以下MCPC)は、長崎県小値賀町にてドローン無線通信方式の実証実験を実施し、結果を小値賀町に報告したことを発表した。

背景

 2018年6月に「無人航空機の飛行に関する許可承認の実施要領」が改訂されるなど、ドローンの目視外飛行(操縦者や補助者による目視を必要としない飛行)を可能とする環境が整いつつある。「空の産業革命に向けたロードマップ」が目標とする有人地帯での目視外飛行(レベル4)を実現するためには、まず離島や山間部等無人地帯での飛行実験を積み重ね、用途に適した無線通信方式や飛行制御方法のノウハウを蓄積しなくてはならない。

小値賀島での実証実験

 MCPCワイヤレスシステム活用委員会ドローンWGは、長崎県小値賀町と協力し、五島列島や小値賀島でのドローン活用検証を行っている。組み込みシステム技術協会(以下JASA)との共同検討を通して、様々なドローン活用シーン(離島間の小口輸送、松林の害虫駆除、密漁監視、海岸線警備等)がこれまでに浮かび上がってきた。また、離島でのドローン活用には、オンデマンド、複数手段、リーズナブルの3要件が重要になる。

 これを踏まえMCPCでは、一度のフライトで複数の活用シーンを同時に満たすマルチユースフライトに適した無線通信方式を検討、2018年7月9日にJASAと共同で小値賀島本当と斑島間を結ぶ飛行実験及び無線通信方式の試験を行い、様々な条件下での通信データを取得した。

【ドローンのマルチユース活用に向けた通信実験】
検証ポイント今回の実証実験今後の予定
制御用通信+他用途制御+アプリ用通信
 (アプリ通信は、切断も想定した蓄積連携)
制御+ミドル+アプリ通信
複数の通信方式連携Wi-Fiのみドローン利用可能な無線(下記)の連携:
 ラジコン操縦者用微弱無線、特定小電力(400MHz帯、920MHz帯:LPWA他)、
 小電力データ通信システム(2.4G帯、5G 帯)、簡易無線局、ラジオ(AM/FM)他
複数機での通信連携活用ドローン
 +ドローン搭載LinuxBOX
 +地上PC/スマデバ
広義のドローン(動くIoT)協調
 (ドローンポート、自宅(宅配Boxロボ他)、
 ドローン自体の自動システム連携)

今後の予定

 JASAの協力のもと、離島・山間部でのドローン実証実験を繰り返し行い、標準的な通信プロファイルの提供やフライト制御方式のリファレンス実装をサポートしていく予定。安心安全なドローンの運航を可能にする運航管理システムにも、無線通信が不可欠な構成要素である。ドローン産業に関わる誰もが使えるプラットフォームを整備することで、MCPCは無人物流など空の産業革命の早期実現を後押しする、との展望を述べた。

参考資料

・ドローン活用検証実験報告書(2018年9月11日)
http://www.mcpc-jp.org/news/index.htm

【小型無人機の飛行レベル】
レベル1目視内での操縦飛行
レベル2目視内飛行(操縦なし)
レベル3無人地帯での目視外飛行(補助者の配置なし)
レベル4有人地帯(第三者上空での目視外飛行(補助者の配置なし)