2018年8月29日、ソフトバンク・テクノロジー(以下SBT)はエナジー・ソリューションズ(以下ESI)、M-SOLUTIONS(以下M-SOL)と共同で、ドローンを用いた太陽光発電所の赤外線検査における人工知能(AI)による赤外線画像(IR)自動解析ツールを開発したことを発表した。

 ESIは、2016年9月に「ドローンアイ」サービスを開始して以来、100カ所400MW以上の太陽光発電所の赤外線検査を実施してきた。これまでの検査ではホットスポットの判別を目視で行い検査報告書を作成してきたが、実施した大量の検査データをSBTが開発した画像認識アルゴリズムを適用させたことで、短時間・低価格でありながらも高精度な異常モジュール検出を実現した。

 またMicrosoft Azure上の仮想環境で稼働するドローンアイIR解析ツール(M-SOL開発)との連携により誰でも迅速・正確に検査解析を行えるようになり、これまで数時間かかっていた解析が3分で行えるようになった。
 同ツールを実装したESIのドローン&クラウドソーラーモジュールIR検査サービス「ドローンアイ」の一般およびドローンアイパートナーへの提供開始は2018年9月を予定している。なおこのシステムは2017年9月に3社共同で特許出願をしている。

ドローンアイの詳細

http://www.energy-itsol.com/service/droneeye.html

「ドローンアイ」全体構成

開発の背景

 2030年を目途としたエネルギーミックスにおいて、再生エネルギーの発電構成比は2016年の15%から2030年の22~24%とおよそ8%の増加が目標とされており、そのうち太陽光発電は2016年の5%と先行して高い割合から、2030年では2%増加の7%が目標とされている(※1)。しかし、再生エネルギーの主力電源化に向けた対策として国際水準に合わせ発電コストの低減が進められている。さらに、非住宅用太陽光発電の買取価格は2012年の40円/kWhから2018年には18円/kWhと年々減額されており、再生可能エネルギー特別措置法(FIT法)改正により太陽光発電所の保守メンテナンスが義務化されていることから、より定期点検や竣工検査といった保守メンテナンス等に掛かるコスト低減が必須となってきている。
※1 資源エネルギー庁『2030年エネルギーミックス実現へ向けた対応について~全体整理~』より

人工知能(AI)による自動解析ツールの特徴

1)2MWメガソーラーの解析が3分で完了。
2)4パターンのモジュール異常に自動分類し解析結果を出力。
3)解析結果をクラウドに保存し、 検査結果報告書を即座に作成。

AIによる赤外線画像認識について

 SBTが開発を行ったAIによる赤外線画像(IR)自動解析ツールは Deep Learning を使ってセグメンテーションと分類による太陽光発電ファームの不良箇所検出を行っており、ある特定のファームにおいては、従来の検出率を維持したまま誤検出を大幅に除去し、取り組み開始時と比較した正解率が12.5%から93.5%に向上している。
 今後も画像分類・検出・セグメンテーションといった技術手法の研究を進め、より精度の高い検出による作業効率化およびクラウドメリットを最大限に活かした自動化、機器搭載による処理の高速化・最適化を目指す。

ドローンアイ自動解析ツール画面

<自動解析中画面>

自動解析中画面
自動解析中画面

<解析結果画面>

解析結果画面

「ドローンアイ」検査結果報告書

ドローンアイパートナーについて

 太陽光発電O&M事業やドローン空撮事業を行っている企業が、ドローンを活用してソーラーモジュールの赤外線検査を展開される際に、ドローンアイのクラウドサービス・ソフトウエア・研修を提供するパートナー制度である。
 ドローンアイパートナーに加入することで、迅速・低コストで精度の高い検査サービスを提供することが可能になる。なお同サービスの提供は2018年9月から開始し、効率的な検査実施の実現に寄与する。

各提供内容は以下の通りである。
1)クラウドサービス
ドローンアイ管理サイト及びAIサーバーを利用し、IR自動解析ツールを使用して検査結果報告書の提出とデータ管理を行うことができる。
2)ソフトウエア
太陽光発電所のレイアウト図と地図情報を合わせた画面でソーラーモジュール検査に最適なドローン自動航行経路を設計できるソフトウエアを提供する。
3)研修
「ドローンアイ」サービスを安全に効果的に実施するためのスタートアップ研修。ドローンによるソーラーモジュール検査の基礎知識、クラウドサービスの使用方法、自動航行設計方法、安全確認事項、実技等をカリキュラムとした基本2日間の研修である。