テラドローン、東急不動産ホールディングス、オムロンヘルスケアは2018年8月10日、 千葉県大網白里市にある一般住宅地とゴルフ場の複合開発地「季美の森」において、迅速な人命救助を目的にAEDを搭載した救急用ドローンによる飛行実験を2018年7月31日に実施したことを発表した。

 本実証実験は、ゴルフ場でプレーヤーが倒れられた場合と季美の森の住宅地内で住民の方が倒れられた場合を想定して行われた。クラブハウスからゴルフコース・個人住宅に向けてドローンによるAED運搬を行い、通常の対応策であるゴルフカートでのAED運搬や救急車を呼んだときと比較してドローンによるAED運搬の有効性を確かめるために行われた。

個人住宅に向けAED運搬を行うドローン

 3社共に今後の展望をコメントしている。テラドローンは空の道を創り・整備することでプラットフォーマーとして業界横断で課題解決を行い、世界へ挑む。東急不動産ホールディングスは今後も社会課題を解決するために、同社グループが持つリソースを最大限活用しさまざまな企業と連携し未来に向けた実証実験を行っていく。オムロン ヘルスケアは救命措置の早期実施による院外での心肺停止者の救命率向上に向け、今後も様々な活動を続けていく、とそれぞれ考えを示した。

<実証実験の概要>
日時: 2018年7月31日(火) 15時~16時30分
実験場所: 季美の森ゴルフ倶楽部(千葉県大網白里市季美の森南2丁目49)
実験主体: テラドローン
実験協力: 東急不動産R&Dセンター、オムロン ヘルスケア、ミライズキミノモリ
実施監修: 一般財団法人日本AED財団
実験内容:
1.季美の森ゴルフ倶楽部の10番ホールのグリーン上でプレーヤーが倒れたと想定し、クラブハウスからドローンでAEDを運搬。ゴルフカートでの運搬時間と比較し、ドローンによるAED運搬の有効性を計測する(距離:約450m)
2.季美の森の住宅地内でAEDを必要とする方が発生したと想定し、ゴルフ場のクラブハウスから実験対象住宅までドローンによるAED運搬を実施(距離:約350m)

当日の写真

<実験結果>
 10番ホールのグリーンへのAED運搬実験では1分44秒でグリーン上空へ到達、2分11秒でAEDを届ける事が出来た。今回は安全の為ドローンの降下を慎重に実施されたが、もし降下時間を早めればさらに早く届ける事が可能となる見込みである。

 また季美の森の住宅へのAED運搬実験では2分22秒でAEDを届ける事が出来た。事前に近隣消防署から実験対象となる住宅までの移動時間を計測(信号待ちの際には計測を停止)したところ、10分10秒の時間を要しておりドローンによるAED運搬は、救急車到着までの間にAEDによる応急処置を早期に実施できる手段として、その有用性を確認する事が出来た。

 今回は両実験とも短距離での実験だったが、距離が伸びるほど、また更なる技術向上によりドローンによる運搬は有効性が増す事が期待される。日本AED財団によると、心停止の救命率は電気ショックが1分遅れるごとに10%ずつ低下する為、AEDの適正配置が難しい郊外団地やスポーツ施設などにおいてドローンによるAEDの運搬は、救命率向上に向けた有効な手段であると確認する事が出来た。

 今後も他の用途での活用を含めて、ドローンによる運搬実験を検討していく方針である。

<参考>
・季美の森
 季美の森は、1994年より東急不動産によって開発・分譲された、約200万平方メートル 、区画数1855戸の住宅地であり日本で唯一のゴルフ場(季美の森ゴルフ倶楽部)併設型の住宅街である。東急不動産ホールディングスグループでは、季美の森において、住民組織と連携し「次世代ライフスタイルを実現するコミュニティ」に向けた各種実証実験、産学連携等によるオープンイノベーションを推進している。

~季美の森概要~
住所:千葉県大網白里市季美の森南1~5丁目、 千葉県東金市季美の森東1~2丁目、
総人口:3,754人、うち高齢者:899人(高齢化率23.94%)
※2015年9月時点

季美の森

実験で使用したドローン

機種名 :MATRICE 600 Pro
寸法  :1668 mm x 1518 mm x 759 mm(H・W・D)
重さ  :9.1 kg (バッテリー含む)
最高速度・最高高度:18 m/s (無風時)、 高度2,500m

MATRICE 600 Pro

実験で使用したAED

製品名:自動体外式除細動器「レスキューハート HDF-3500」
外形寸法:縦200×幅180×高さ50mm
本体質量:約1.1kg(除細動パッドパックを含む)