日本初の水中ドローン開発・製造メーカー・株式会社空間知能化研究所(以下「空間知能化研究所」)は、総額1.9億円の資金調達を実施したことを8月21日(月)に発表した。2017年秋から水中ドローン「SLIDER」 のレンタルサービスを、来春には国内外の消費者に向けた同商品の販売を開始する予定だ。

 空中知能化研究所は、水中を探査するドローンの開発・製造を手掛ける筑波大学発のベンチャー。日本初の水中ドローン専用メーカーだ。筑波大学第三学群工学システム学類を卒業し、 ロボティクスの開発に重要な3領域、 メカ・回路・組込みソフトウェアを一気通貫で開発できる技術バックグラウンドを持つ伊藤 昌平(代表取締役)と、 センサー、 クラウドシステムの専門家であり筑波大学教授の中内 靖(取締役会長)が2014年に共同創業した。

 水中の撮影・探索は手軽に実施できるとは言い難い状況にある。潜水士が業務で潜行できるには約40メートルであり、より深くもぐる場合には操作が難しく高価な「遠隔無人探査機(ROV)」が必要となる。更に、日本国内では近海の石油産出が少ないことから、水中探査機を開発する会社がほとんど存在せず、探査機器や調査価格は高止まりしている。しかし、昨今ダムや港湾等の水中インフラ長寿命化を見据えた維持・管理の機運が高まっており、手軽な水中探査機の必要性が高まってきているのだ。

そんな中、空中機能化研究所の開発する水中ドローンは、 本格的な潜行性能(300m)、 鮮明な画像取得に必須となる姿勢制御機能を持ちながら、 小型・軽量・低価格に抑えることを実現。 従来のROVを利用した場合にかかる導入・運用コストを数分の一に削減することを可能にしている。

 空中機能化研究所は、リードインベスターであるBeyond Next Venture株式会社、三井住友海上キャピタル株式会社およびSMBCベンチャーキャピタル株式会社が運営するファンド、ならびにフリービットインベストメント株式会社を引受先とする総額1.9億円の資金調達を実施。これにより、今後拡大が見込まれる水中インフラの維持・管理市場に向けて、業務用水中ドローンの普及促進に力を入れていく方針だ。今回の資金調達に伴い、2017年に11月には水中ドローン「SPIDER」のレンタルサービスを、来春には同商品の販売を開始することを予定している。

 「SPIDER」は 8つのスラスターを持ち、 船上のPCとテザーケーブル1本で接続される。操作はゲームパッドで行う。 300mの潜行性能を持ち、 バッテリ駆動で約4時間の稼働が可能だ。 最大の特徴はソフトウェアにあり、 深度・姿勢を自動で維持できる機能や、 画像処理による機体の位置保持機能を実装している。 そのため、 これまで困難だった潮流等の水の流れがある環境での調査をより簡単に実施することが可能になる。

 空中知能化研究所は、「現在は、 市場ニーズの高い水深300mまで潜行可能な水中ドローンの普及に専念していますが、 将来的にはさらなる深海まで探査可能な製品の開発を行います。」と述べ、自社の水中ドローンの普及の拡大、そして開発への意欲を表明している。