国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2017年7月14日、宇宙ステーション内を動き回りながらカメラでステーション内の様子を撮影するドローン「JEM自律移動型船内カメラ(愛称:Int-Ball)」が捉えた映像を公開した。Int-Ballが撮影した画像を硬化するのはこれが始めて。

JAXAが開発したドローン「Int-Ball」。本体は直径150mm以下の球形と、コンパクトにまとまっている

 Int-BallはJAXAが開発したもので、宇宙ステーションで活動する宇宙飛行士の作業負荷軽減を目指している。JAXAによると、宇宙ステーションにおける宇宙飛行士の作業時間のおよそ10%を撮影業務が占めているという。宇宙飛行士に代わって撮影するドローンを開発し、実用化することで、将来は宇宙飛行士が撮影作業に費やす時間をゼロにすること目指しているという。

JAXAが公開した動画。Int-Ballが宇宙ステーション内で動き回る様子を見ることができる

 Int-Ballは、小型ファンを備えており、これを回転させることで推力を得て、宇宙空間内を動き回る。また、機体の姿勢を安定させるために「リアクションホイール」というコマのような回転体を内蔵している。リアクションホイールの回転数を変化させると、回転数変動の反作用によって、機体を少しだけ回転させることが可能だ。

超小型三軸姿勢制御モジュールについて

 本体は直径150mm以下の球体で、重量は1kg以下、満充電状態からおよそ2時間の運用が可能だ。Int-Ballは、既存のドローン技術を応用しながら、外装と内部構造はすべて3Dプリンタで製造したという。

 搭載するカメラはHD(1280×720ピクセル)とフルHD(1920×1080ピクセル)の動画と静止画(動画は音声なし)を撮影する能力を持っており、撮影した画像は無線LANで宇宙ステーション内のアクセスポイントに送信する。Int-Ballは茨城県つくば市の「筑波宇宙センター」が遠隔操作しており、指示通りにステーション内を動き回り、動画や静止画を撮影する。撮影した映像はリアルタイムで地球上にいる管制官や研究者が確認できるようになっていて、気付いた点があったら宇宙飛行士に地球上から知らせることができる。

 JAXAは、2017年6月4日にNASAがアメリカ・フロリダ州のケネディ宇宙センター打ち上げたドラゴン補給船運用11号機にInt-Ballを載せて、国際宇宙ステーション「きぼう」まで運んだ。現在は「きぼう」内で初期検証をしている段階だという。

 JAXAは今後、Int-Ballの性能向上、機能強化に向けて研究開発を進め、「きぼう」船内だけでなく、船外の飛行も可能とし、宇宙飛行士による船外活動の撮影などに活用する方針を示している。