CLUEは2017年5月16日、ガーナで大きな問題となっている金の違法採掘の撲滅に向けてガーナ政府と協力すると発表した。CLUEはドローンで違法採掘現場を監視することで解決を目指すとしている。

 違法採掘現場は広大な森林の奥地にあり、人間が巡回して取り締まることはほとんど不可能。上空からの監視で取り締まろうにも、飛行機では飛行高度が高すぎて違法採掘者を見つけるのは困難。もっと低いところから監視できればよいのだが、ヘリコプターは使用料金が高いのでそう何回も使えるものではない。

 そこで、ヘリコプターよりもはるかに低いコストで飛ばせて、かなり低いところを飛行できるドローンで巡回して取り締まろういうわけだ。さらに、ドローンが撮影する写真には位置情報が残るので違法採掘現場の特定も容易になるという利点もある。

 ガーナでドローンを飛行させるには、ガーナの民間航空局であるGhana's Civil Aviation Authority(GCAA)が発行する公式飛行許可証が必要だ。許可証を持たずにドローンを飛ばすと、30年以下の懲役または1000万円以下の罰金という重い罪が待っている。CLUEはガーナでの事業展開を見据えて、GCAAから公式飛行許可証を取得している。

ガーナでドローンを飛ばすCLUEの社員

 「金の違法採掘」と聞くと、「人の物を盗み取ることが問題」と思う人が多いかもしれない。しかし、金の違法採掘はもっと深刻な問題につながっているのだ。

 まず、違法採掘の現場は広大な森林の奥深いところだ。何人もの違法採掘者が現場にたどり着くまでに、勝手に樹木を伐採して道を作り、自然が残る場所を踏み荒らす。採掘のためにブルドーザーなどの重機で乗り込む連中もいる。違法採掘者は金のためなら自然破壊などまったく気にも留めないのだ。

 より深刻な問題は、金鉱石採掘後の精錬過程にある。現代的な設備を揃えた鉱山なら、安全で確実な方法で精錬するものだが、違法採掘者には安全で確実な方法を選ぶほどの資金的余裕がない。そこで、原始的だが低コストで利用できる方法で精錬する。簡単に安価で手に入る水銀を利用するのだ。金が水銀に溶けるという性質を利用した方法で、大まかに言うと採掘した金鉱石を水銀で溶かし、高温で加熱して水銀を蒸発させて残る金を得るという方法だ。

 言うまでもなく水銀は毒性の強い物質だ。1950年代後半に日本で見つかった「水俣病」は、水銀の影響で中枢神経に障害をきたす公害病だ。発症すると死に至ることも多く、生き延びたとしても一生重い障害を抱えて生きていかなければならない。

 そして今、ガーナの違法採掘現場では水俣病と同じように、水銀の影響で健康を損なう現地住民が増加している。精錬過程で水銀を蒸発させるときに、蒸気となった水銀を吸い込んでしまう例もある。そして違法採掘者は、精錬に使った水銀を現地の河川や湖に不法投棄していく。この水銀が河川や土壌を汚染していったら、いずれは現地住民の健康に悪影響が及ぶだろう。金の違法採掘は、人間の生命を脅かす問題となっているのだ。

 そこまで大きな問題になっても、違法採掘に手を染める人間は後を絶たない。金の価格が上昇しているからだ。金の市場価格は2001年には1オンス当たり250米ドルほどだったが、最近は1オンスあたり1300米ドル前後まで上がっている。1600米ドル前後まで急騰したこともある。金の違法採掘は、危険な犯罪だが一攫千金のチャンスでもあるのだ。

 広大な森林のどこかに潜む違法盗掘者を確実に摘発するために、効率良く巡回する方法を考えなければならない。CLUEはガーナ政府と共に、違法採掘の摘発を目指すとしている。ガーナで暮らす人たちの健康を守るために、違法採掘を摘発する方法を見付け出していくだろう。